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産業レポート2016.10.01

拡大が進むバングラデシュの医療機器市場〜医療機器のデジタル化が牽引する成長市場〜

地域:全国

分野:保健医療

医療サービスのイメージ

市場規模は約250億円:年率14.5%の成長

「1日に1000人以上が検査を受けに来ます。」訪問した地方の中心都市にある診察センター(Diagnostic Center)で案内をしてくれたスタッフが説明してくれた。バングラデシュでは、検診に訪れる人々が年々増えているという。ロビーでは、大勢の人々で溢れかえっていた。

診察センターは、病床を持たないが、デジタルX線診断装置やCTスキャンなどの近代的な医療機器を備え、病院やクリニックでの診断に必要な検診を行う。診断センターの数は、2010年には5000施設に過ぎなかったが、2015年には9000施設を超えるまでに増えた。診断センターを訪れるのは富裕層だけではない。一般市民が大勢やってくる。

センターの待合室の様子

マイメンシン市にあるDiagnostic Centerの様子

バングラデシュは、過去10年以上にわたり年率6%以上の経済成長を遂げた。個人所得の水準は大きく向上し、人々はより豊かで、健康な生活を求めるようになっている。

こうした社会の変化を受けて、医療サービス業も年々規模を拡大し、それを支える医療機器市場も成長している。現在(2016年)、医療機器市場の規模は、2億2500万ドル(約250億円)と推定されており、今後も年率14.5%の成長を続け、2019年には3億8400万ドル(約425億円)に拡大すると予測されている 。諸外国に比べ、まだ小さい規模ではあるが、今後の経済成長に伴い、有望な市場である。

医療機器は輸入製品が大半

「国内で製造された医療機器は、注射針や点滴用の袋などのほんの一部にすぎません」とジョンソン&ジョンソンのバングラデシュのおける輸入代理店であるReliance Solution Limitedのカマル社長が現状を説明してくれた。注射などの一部の医療器具を除き、バングラデシュの医療機器は輸入製品が大半を占める。バングラデシュで利用される9割以上の医療機器を外国製に頼っているのだ。

医療機器の輸入代理店は、バングラデシュに250社以上あり、そのうち大手と言われる業者は50社程度とされる。米国ジョンソン&ジョンソンのようにバングラデシュ国内の正規代理店を通じて販売を行っているところがあれば、シーメンス(Siemens)のように100%現地法人Siemens Bangladesh Limitedで販売活動を展開しているところもある。インドなどのアジア拠点からバングラデシュをカバーしているところも多い。

MRI

Diagnostic Centerで使われる日立製MRI

日本企業では、富士フィルムと島津製作所の正規代理店であるGME Limitedが、画像診断関連の医療機器分野でトップシェアを持つ他、日立や東芝も地元の代理店で販売を行っている。

大手代理店のビジネスは大型・中堅病院へのB2Bの販売が主体であり、ダッカ市内では民間病院と直接ネットワークを築き、地方では販売パートナーを通じて、地域の病院とつながっている。

中小の輸入業社はB2Cを主体とし、ダッカ市内に数カ所ある医療機器の卸マーケットで店を構え、ダッカ市内の薬局や、地域の販売業者を通じて地方の薬局などへ卸す。

医療機器の卸売りマーケット

ダッカ市内の医療機器の卸売りマーケット

デジタル化が進む医療機器

バングラデシュに医療機器市場の特徴として、機器のデジタル化が進んでいることが挙げられる。従来、コンピュータを使用した高度な医療機器は、それを使いこなせる技術者が少なく、たとえ購入したとしても使われずに埃をかぶっていることも多かった。

しかし、近年、国内の医療機器販売事業者側の地道な努力が功を奏し、医療関係者のデジタル機器への抵抗感が徐々に低くなっている。

例えばX線診断では、X線フィルムを手作業で現像する手法が長らく続けられており、これをデジタル化することへの技術者の不満は強かった。販売事業者側は、技術者へのトレーニングを時間かけて丁寧に行い、導入後も迅速で徹底したアフターサービスを行う体制を整備することで現場の技術者の抵抗感を減らす努力を重ねた。

こうした努力の結果、デジタル化する医療機関の成功事例が増え、民間病院や診断センターを中心にデジタル医療機器を導入するところが増え始めた。質の良い医療サービスを求める国民のニーズが高まるにつれ、デジタル化による効率的な病院運営が求められてきたことも、医療機器のデジタル化を後押しした。

医療機関の様子

医療機関の様子:手前がデジタルX線画像診断システム

高まるサポート体制構築の重要性

前出のカマル氏によれば、バングラデシュでも「世界のトップブランドがトップシェアを占めている」という。政府が調達する医療機器は入札制が原則であり、低価格の製品が優先されるが、民間の医療機関では、品質やメンテナンスが良い医療機器を多少値段が高くても購入する傾向がある。患者側も「家族のために、少しでも良い医療機器・器具で検診・治療して欲しい」と考える人々が多くなったという。

品質の悪い医療機器は、最初は安くとも、長い目で見れば故障に伴う修理や再購入のコストが高くつく。これまで価格を優先してきた政府においても、最近では品質や製品寿命、きちんとしたサポート体制の有無などが優先されてきているという。

特にサポート体制は重要である。信頼できるサポート体制を持つことが、営業を大きく左右することから、各社ともサポート体制構築に力を入れる。サポート体制を支える優秀な人材の確保と育成が喫緊の課題である。

米国のジョンソン&ジョンソンは、バングラデシュの正規代理店に対して、毎年インド拠点にエンジニアを招いて研修を実施するほか、時には米国から研修員が派遣されてトレーニングを行うという。

また、業界トップのGME Limited(富士フィルムや島津製作所の製品を扱う)では、自社内に研修センターを構え、自社エンジニアの育成に力を注ぐ。顧客側の技術者のトレーニングにも力を入れている。

FUJIFILMの医療機器

富士フイルムの医療機器:ダッカ市内での展示会にて

医療機器の国内製造を見据える現地企業

輸入一辺倒であったバングラデシュの医療機器業界にも、変化が見えている。「次の目標は、国内で医療機器製造のビジネスを立ち上げることです」と業界トップのGME Limitedのハサン社長は意気込む。医療・ヘルスケア市場は今後も大きく成長することが見込まれ、国産医療機器ビジネスでも十分に採算が見込めると読む。将来的には、バングラデシュから輸出することも見据える。

すでにバングラデシュの医薬品業界が、輸入依存から国産へ大きく転換した。いまや国内市場の9割以上をバングラデシュのメーカーが占め、市場規模も2001年から2014年までに4倍以上に拡大した。国内だけではなく、輸出額も増えている。

医療機器産業でも、早晩、同じパターンが繰り返されることが予想される。すでに、病院のベッドも、以前はほとんど輸入製品に頼っていたが、現在はOTOBIやNavanaといった国内メーカーが市場を占めるようになった(輸入品には高い関税が付加される)。

バングラデシュの医療機器市場は、特殊な法規制や商習慣があり、日本企業が単独で参入するのは難しいが、地場の企業との提携や合弁などの方法が考えられる。特に、今後はじまるバングラデシュ国内での医療機器製造ビジネスにおいて、日本の技術、設備、生産管理、品質管理などの点で日本企業の強みを発揮することが期待される。

バングラデシュ製の注射器

バングラデシュ製注射器:韓国メーカーと提携したJMI社

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