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産業レポート2015.02.01

農業機械の導入が始まったバングラデシュ 第1回

地域:全国

テーマ:農業/農村開発

カテゴリ:技術・デザイン

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信じられないほど作業が楽になった。

ここはバングラデシュの南、ボリシャル市郊外の農村にハサンさんを訪ねた。バングラデシュで農民の農作業の効率化を農業機械の導入で改善しようとするプロジェクトを進めるiDE Bangladeshの案内で訪問することができた。

ハサンさんは、農繁期に近隣の農家の農作業を請け負うサービス・プロバイダーと呼ばれる業者で、田植えや稲刈りの時期になると日雇いの労働者を集め、零細農家の作業を手伝う。今年、念願の稲刈り機を割賦購入した。これで農作業に掛かる生産効率が格段に改善したという。

昨年まで8人が1日がかりで行っていた稲刈り。今年はたった一人で、わずか1時間で済んだという。人件費を抑え、作業時間も短縮させることで請負面積を広げ、ビジネスとしての利益率も大きく上がったと喜ぶ。


バングラデシュは、米作を中心とした農業が盛んだ。1億6千万人の食卓を支える農業は、同国の基幹産業である。いまや米の生産量は世界第4位となり、2600万人の農民が、年間3500万トンを生産している。しかし、その歴史は、必ずしも平坦ではなかった。

独立直後の1971年、農地は荒れ果て、6700万人(当時)の多くが飢餓の状態に追い込まれた。食料生産は国家の最優先事項となり、JICAをはじめとした国際社会の支援も受けて、農業生産の改善が取り組まれた。用水路や井戸を全国に整備し、灌漑面積を広げた。1982年には国土の12.5%であった灌漑農地は、2009年には42.6%にまで広がる。地下水や河川の水の利用も推進し、乾季でも稲作ができるようになり、今や年間に3回も米を収穫する3期作が主流となっている。

40年間で2.5倍に急増した人口を支えることができているのは、こうした長年に渡る努力の賜物である。1975年には1000万トンの生産量に過ぎなかったものが、世界屈指の米の生産国へと生まれ変わった。

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こうした食料生産は、多くの品種改良や農業技術を投入することで発展したが、農作業そのものは、労働集約的な伝統的な方法を取られてきた。田んぼを鍬で耕し、苗を一つ一つ手で植えて、手作業で除草し、稲刈りも人手をかけて行う。脱穀も精米も、全て手作業である。こうした作業を、日雇いや貧農の女性が行ってきた。1年で3回も行う一連の農作業は並大抵の労働ではなく、先進国の農業生産に比べ、生産効率は非常に低い。

こうした労働集約的な農作業にも、近年限界が見え始めている。大きな要因は、バングラデシュにおける産業構造の変化である。1975年に GDPの37%を占めていた農業の割合は、現在20%にまで低下した。代わりに台頭したのが第二次産業、特に輸出の7割を占める縫製関係の加工産業である。より良い待遇を求めて、多くの安い労働力が都市部やその郊外にある工場労働者に流れていくようになった。

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その結果、農村で働く人口が大幅に減った。国際労働機関(ILO)の調査によれば、2000年〜2010年までの10年間で農業に従事する人口は250万人減少したという。農作業の担い手であった低賃金で働く労働者の確保が難しくなり、この5年間で何と人件費が4倍になっているとも聞く。農村では、今、深刻な人手不足に見舞われているのだ。

過去数百年間、連綿と続けられてきた伝統的な農作業の方法は、今、大きな転機を迎えようとしている。農業機械化の進展である。まだ小さく始まったばかりであるが、農業の機械化の波はいずれ農村の風景を一変するようになるであろう。

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