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産業レポート2015.02.01

省エネ電球で様変わりする農村 第2回

地域:全国

テーマ:資源・エネルギー

カテゴリ:注目分野

農作業の様子

電球型蛍光灯は、都市や農村の区別無く、瞬く間に従来の白熱電灯を置き換え、全国に普及した。白熱電球の値段は50タカ(約65円)に対し、電球型白熱灯は300タカ(約390円)と単価は高いが、「電気代が安く、長持ちする照明」というイメージが上手く浸透したことで広がった。メーカーは増産に追われ、生産設備を次々に増強し、街の電気屋の店先も、電球型蛍光灯で溢れるようになった。

しかし、勢いを増す市場の拡大とは裏腹に、電球型蛍光灯には大きな問題があることが次第に明らかになってきた。使用済み電球の処理方法である。電球型蛍光灯は、きちんと処理をしないと人体と環境に大きな負荷をかけるリスクを持っていた。

廃棄処理の難しさで市場縮小

電球型蛍光灯は、人体に有害な水銀ガスを含んでおり、回収時には電球が割れないような分別回収を行い、中の水銀ガスを安全に抜き出す処理が必要となる。水銀ガスは吸い込むと中枢神経系への支障や肝臓障害を引き起こす。日本を含む先進国では安全のための細かい処理方法が規定されており、特別の処理施設で廃棄する。

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出典: Dumped CFLs hazarding life, Dhaka Tribune, 2013年9月6日

ところがバングラデシュでは、このような処理方法も処理施設も用意しないままに普及が進み、年間1000万個を超える電球型蛍光灯が一般ゴミと区別せずに扱われ、ゴミの最終処分場で埋め立て処分されている。ゴミの収集所では割れた電球から水銀ガスが漏れ、埋め立て地では水銀ガスが液体となり、地下に浸みて行く。省エネのエースが、環境破壊の元凶になっているのだ。

このような状態を受け、政府は2014年、電球型蛍光灯を普及する世界銀行のプロジェクトを打ち切った。

新たな希望:LED電球の導入

バングラデシュが電球型蛍光灯の次に期待をかけているのがLED電球である。

LED電球は、白熱電球の1/7の消費電力で10倍の寿命を持つ。水銀などの有害物質を含まず、環境に優しいのが特徴で、日本でも2010年頃より普及が本格化した。日本での価格は、導入当初(2009年頃)は6000円以上していたが、徐々に下がっていき、現在では1500円〜2000円程度で販売されるようになっている。

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LED電球の低価格化は、バングラデシュにおいてもLEDを広く普及する道を開いた。LED電球にいち早く目を付けて、普及に大きな役割を担っているのが、政府が推進している無電化地域における自家用の太陽光発電システム(Solar Home System、以下「SHS」)の販売業者達だ。今や累計300万世帯に広がったSHSは、LED電球の登場により普及の勢いを増した。

従来のSHSは、発電容量が小さいので、電球一個の点灯が精一杯であった。しかし、消費電力が極端に少ないLED電球を使うことで、電球3個の他にテレビや扇風機などの他の家電とのセットでシステムを販売できるようになった。

通常の電力網に繋がっている家と違い、農村の無電化地域での自家発電では発電量も小さく、蓄電できる容量も大きくない。現在、農村で普及しているタイプは50W型が主流である。以前であればこのような電力量でテレビを自宅で見ることは不可能であったが、液晶テレビの消費電力は15Wほどなので、LED電球を3つほど点灯しても、充分に視聴できる余力が生まれた。今では、テレビ見たさにソーラー・ホーム・システムを設置したいという人が増えてきて、SHSの設置増に拍車をかけている。今、SHSは毎年100万世帯が新たに設置している。これは各家庭の構成員が6名とすれば、600万人が新たに電気にアクセスができているということになる。

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LED電球で変わる農村のライフスタイル

テレビが普及すると関連のビジネスも広がる。今まで農村に見向きもしなかったケーブルテレビの事業者が、競って農家をターゲットに営業するようになった。バングラデシュのケーブルテレビは100局近い国内外の番組を流しており、料金はひと月200タカ(約280円)である。この料金であれば一般の農民が支払う事ができる。LED電球の普及は、省エネという目的に留まらず、今まで電気が通じていなかった人々のライフスタイルにまで変化を起こしていくようだ。

報道によれば、バングラデシュ政府は2015年からLED電球に対する輸入関税を大幅に引き下げて普及を促すという。また、LEDの国内での製造も始まってきている。既に複数のメーカーの製品が商品化され、市場に出回ってきている。5WのLEDの電球は350タカ(約490円)で販売されている。

白熱電球の時代を飛び越えて、今、最先端のLED電球の普及にバングラデシュは動き出している。

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