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産業レポート2015.02.01

省エネ電球で様変わりする農村 第1回

地域:全国

テーマ:資源・エネルギー

カテゴリ:注目分野

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半年前まで電気が通じていなかった農村に灯りがともり、LEDランプに照らされて家族が安心して過ごす。夕食の後は液晶テレビに映るBBCで世界のニュースを知り、Discovery Channelで子どもたちが科学を学ぶ。天井の扇風機から流れる風は、吹き出る汗を乾かし、熱帯の暑さを和らげてくれる。

一昔前では想像もできなかった夢のような話が、今、バングラデシュの農村では実際に起きているのである。

インフラや生活必需品の普及が遅れている途上国で、最先端の技術が先進国以上に早く普及する現象がある。これはいわゆる「リープフロッグ(跳び蛙)型」の発展といい、発展途上国が技術の発展段階を飛び越えて最先端技術を活用することをいう。今、バングラデシュでは「LED電球」の導入により大きなリープフロッグが起きようとしている。しかも、電気の通じていなかった無電化地域の農村で、その革新的な変化が始まっているのだ。

電力消費量20%の攻防

バングラデシュでは、経済発展に伴う電力需要が急激に増大している。2005年には26,000Gwhだった消費電力量は、2010年に42,000Gwhまで増加し、2021年には現在の4倍にも増えるという。

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この増大する需要に応えるべく、バングラデシュ政府は大規模な発電所建設を次々に進めており、日本政府もそれを後押ししている。2014年5月の安倍首相のバングラデシュ訪問時に、1200MWの石炭火力発電所の建設支援に450億円のODAを投入する契約を締結した。しかし、慢性的な電力不足は一向に解消しない。全国の47%は、未だに十分な電力供給を受けていない無電化地域だ。

一方、増大する一方の電力需要の抑制も大きな課題である。電力需要の最大のものは工業部門であるが、国民の生活が豊かになったことを反映して家庭部門も近年伸びてきている。少し古い統計だが、電力消費量は2001年からの8年間で300%伸びた。

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これを抑制することが需要な課題となるが、バングラデシュで特徴的なのは照明に使う電力量の占める大きさである。全国の総電力消費量の30%が照明により占められているという(出典: Dhaka Power Distribution Company)。日本では照明の占める割合が16%(出典:日本エネルギー経済研究所)であることと比べると、2倍以上となる。この突出した照明の電力消費量を押さえるべく、バングラデシュでは電球の省エネ化の推進が重要な政策課題となってきた。

省エネ型電球の推進

バングラデシュにおいて照明の省エネ化は電球型蛍光灯の導入から始まった。電球型蛍光灯は、白熱電球の1/5の消費電力でありながら、4倍の寿命を持つ省エネ型電球で、先進国では一般的に普及しているものである。

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電球型蛍光灯

2005年にバングラデシュ政府は1000万個の白熱電球を電球型蛍光灯に置き換える「Efficient Lighting Initiative for Bangladesh(ELIB)」を開始した。当時、バングラデシュ全国で使われている電球の総数は2800万個(2005年時点)と推定されていたので、その約1/3を変えようとする大きなプロジェクトである。世界銀行から12億円の資金支援を受け、1400の営業所を全国各地に配置、5年間で合計1050万個の電球型蛍光灯を無料配布した。その結果、プロジェクトの終了時には大型火力発電所(400MW)の1基分に相当する電力量の削減に成功したという。

この政府の積極的な推進により、白熱電球は急速に電球型蛍光灯に置き換わっていった。中国からの輸入に加え、国内でもメーカーが生産に乗り出し、市場は大きく広がり、折からの家庭用太陽光発電システムの全国展開にも伴って、全国津々浦々まで普及した。電球型蛍光灯の販売個数は、2008年には400万個(出典:The Daily Star, “Local Energy saver flicker on ”,2009年5月)、2013年には1100万個(出典: Dhaka Tribune, “Dumped CFLs hazarding life”,2013年9)と順調に伸びて行ったのである。

しかし、その市場拡大に思いがけないブレーキが掛かった。廃棄された電球型蛍光灯が人体へ悪影響を与えるとして、環境問題となったのだ。

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