ベースライン調査の実施
2015年9-2016年1月
2015年9月から2016年1月にわたり、東部県のモデル4郡において、1,200世帯を対象とした給水施設の利用実態調査、879の給水施設の維持管理実態調査、郡の社会経済調査および関係機関の組織調査を行いました。その後、カウンターパートとプロジェクト専門家チームが協同で調査結果を分析し、分析結果から導き出された地方給水施設にかかわる課題について話し合いをしました。
これらの調査の目的はプロジェクト活動実施前の状況や問題点を把握することであり、プロジェクト終了時には同様の調査を実施することで、当プロジェクトによってどれだけの効果や影響が出たかを測ることになります。
本プロジェクトは地方給水施設の維持管理体制に基づいて、関係組織・職員の維持管理能力を向上させることを目指しています。そのため、ベースライン調査結果から導き出された課題にもとづき、第2期以降に実施する関係職員の能力強化研修の内容に反映する必要があります。ベースライン調査から具体的には以下のような状況、問題点が明らかになりました。
(1)世帯調査
- あるモデル郡において家から湧水までの世帯平均距離(回答者の感覚値による)は約1,400メートル(注1)である
- 公共水栓での水料金(20リットル)は3.6円(注2)である
- 調査時の過去2週間以内に下痢に罹患している世帯の割合は17.3%(注3)である
- 各世帯の水汲みの主体は子どもが47%(注4)を占めている
(2)給水施設の維持管理実態調査
(a)パイプ給水システム
- 69施設中65施設(94%)が稼動している
- 69施設中52施設(75%)で塩素管理システムが導入されていない
- 69施設中36の共同水栓(52%)から大腸菌群が検出されている
(b)井戸
- 240箇所中69箇所(29%)で稼動している
- 80%の井戸において維持管理主体が不在である
- 3郡の全ての井戸で利用者から水料金が定期的に徴収されていない
- 92%の井戸で保護柵が設置されず、家畜から水源が衛生的に保護されていない
(c)改善湧水
- 528箇所中498箇所(94%)の改善湧水が稼動している
- 80%以上の改善湧水において維持管理主体が不在である
- その他、水料金の徴収や衛生環境に関して井戸と同じような問題が確認されている
(3)郡の組織調査
郡は地方給水施設の所有者であり、その維持管理を委託契約に基づいて民間会社に委託しています。郡は委託を請け負った民間会社からは上納金を受け取り、その資金で施設の大型修理をする責任があります。しかしながら、郡には税金と上納金を個別に管理できる専用銀行口座がないため上納金が一般財源化されてしまい、その結果、大型修理の財源が不明確になり、郡の修理責任が果たせていません。さらに財務省指定の財務報告書の書式には上納金の項目がないことも、財源を適切に管理できない原因のひとつになっています。
(注1)100世帯の平均値
(注2)モデル4郡の平均値、1円=約7ルワンダ・フランで計算
(注3)モデル4郡の平均値
(注5)モデル4郡の平均値
パイプ給水システムの公共水栓
井戸(ハンドポンプ付き)
改善湧水
基盤が壊れて放棄された(使用できない)井戸
家畜から衛生的に保護されていない改善湧水
低木を利用した保護柵の設置された改善湧水
改善湧水までの急峻な地形の様子
丘の谷間に位置する改善湧水