2020年のNational TVET Dayを労働職業訓練省がオンライン開催

カンボジアでは閣僚会議令に基づき、毎年6月15日をNational TVET Day(全国職業訓練の日)と位置づけ、学生をはじめとする国民の職業訓練の重要性に関する意識を啓発しています。近年はプノンペンの国際会議場で2日間のイベントが開催され、当プロジェクトは2017年以降、ブースを出展してきました(昨年の模様は、2019年6月16日付けニュースを参照)。

本年のイベントは、新型コロナウィルス感染症(Covid-19)の発生を受けて、大きな変更を余儀なくされました(注1)。カンボジア労働職業訓練省(MLVT)で実施可能な行事の検討がなされた結果、6月15日の一日に絞り、「TVETは人生をよりよくする」(TVET makes life better)とのテーマで、オンラインで開催されることとなりました。

開催に先立って、フン・セン首相が書簡を発表されました。政府は技術職業訓練システムに重点的に投資をおこなっており、この5年間、研修生、学生や労働者を含む20万人以上が新しい技能訓練を経験し、良い仕事の機会を見出したり、自ら仕事を創り出したりしたとのことです。また、「職業技能は、国民が安定した仕事、新しい仕事への速やかな移動の機会を得る上で基幹的な役割を果たす」、「学生が今後の就職機会での競争力を決定づける技能や職業倫理を手に入れることができるよう、職業訓練コースへの登録を引き続き奨励し増やしていくべき」として、関係者のこの日への参加と職業訓練の促進が求められました(注2)。

当日は、MLVTが関係省庁等の協力を得つつ、職業訓練の重要性に関する機運を醸成するビデオの放映(専用サイト「TVET-News」)がなされたほか、パイロット職業訓練校3校(NPIC、NTTI及びPPI)をはじめとする国内の訓練校や州の行政組織(カンボジアでは州(province)ごとに労働職業訓練省の地方機関があります)がバナーを掲げました。

オンラインでのイット・ソムヘーン労働職業訓練大臣の開会挨拶やその後の座談会では、Covid-19の問題が起こり、カンボジアの経済社会の先行きが不透明となっているこの時期、一人ひとりが生涯を通じて職業能力を培っていくことの重要性が高まっているといった話がなされました。

当プロジェクトの関係では、昨年の同イベントでの実習ワークショップの状況やメッセージが上記ビデオ内で放映されたほか、MLVT傘下の訓練校を紹介する冊子(昨年、改訂作業に協力し、現地のクメール語に加えて英語版の監修をおこないました)について、同省からの要請を受けて増刷に協力しました。同国の職業訓練の発展に向けた共通基盤として、他の開発ドナーにとっても大いに参考となることが期待されます。

当プロジェクトでは、カンボジアにおける人材育成の機運が一層醸成され、技能形成が進むよう、引き続き関係者との連携を深めながら、支援をおこなっていきたいと思います。

(注1)カンボジアではCovid-19の第2波への警戒が続いていますが、政府によると、2020年6月14日時点の感染確認数は合計128例(死者はゼロ)と公表されています。

(注2)本年のNational TVET Dayをめぐる現地の主な報道(英語)は、次のとおりです。

(参考)2020年National TVET Dayに関する現地報道の仮訳

フン・セン首相はNational TVET Dayの促進を呼びかけ(6月13日・フレッシュニュース)

・フン・セン首相は6月12日の書簡で、6月15日に「TVETは人生をよりよくする」(TVET makes life better)とのテーマで開催される3回目(注:2018年より、閣僚会議令に基づく現行の位置づけとなった)のNational TVET Dayに同胞が参加し促進することを求めました。
・首相は、「カンボジア王国は教師、生徒、親、保護者、従業員、使用者、NGO、開発パートナーやその他の国民に対して、この日への最大限の参加と促進を求める」と述べました。
・国は、新型コロナウィルス感染症の拡大を防ぎつつ、この日を祝福するため、(1)労働職業訓練省がビデオ、記録によって運営する責任を負うこと、(2)関係省庁や職業訓練校はあらゆる手段を講じて支援や促進に協力すること、(3)情報省は官民双方やソーシャルメディアを指揮し、首相のメッセージやビデオその他の文書の提供をおこなうこと、(4)関係省庁、職業訓練校や州の行政組織は、この日を祝福するバナーやスローガンを掲げる準備をすることをアドバイスしました。

首相は若者に職業訓練の習得を奨励(6月14日・クメールタイムズ)

・フン・セン首相は国民とりわけ若者に対して、就職機会を拡げる職業訓練に参加することを求めました。発言は6月15日の第3回National TVET Dayを前に出されました。
・書簡において、首相は官民セクター及び開発パートナーに対して、カンボジアの人びとの職業教育訓練を引き続き促進し進展させることを求めました。首相による、より良い職業訓練の発展のための6つのプランの中には、同国が「インダストリー4.0」の新しいパラダイムに適合しようとしている中で、より多くの人びとが職業訓練を選択することの奨励が含まれます。
・首相は、「(我々は)学生が、今後の就職機会に際しての競争力を決定づける、技能や良い職業倫理を得ることができるよう、技術職業コースへの入学を引き続き奨励し増やしていくべきである」と述べています。
・今年のNational TVET Dayのテーマは、「TVETは人生をよりよくする」(TVET makes life better)です。新型コロナウィルス感染症のため、政府は、職業訓練の重要性に関する機運を醸成するデジタルなコンテンツの作成に取り組み、その祝福をオンラインでおこなうこととしています。

フン・セン首相:職業訓練の技能は人的資源開発のカギ(6月15日・プノンペンポスト)

・フン・セン首相は、6月15日月曜に開催される第3回TVET Dayを称賛する書簡において、教育訓練は専門的な知識、技能やプロフェッショナルな倫理を備えた人的資源を開発するカギとなる役割を果たしてきたと述べました。首相は、訓練プログラムはまた、経済成長を刺激することに寄与し、国民にとっての良い仕事を創り出してきたと述べました。
・TVET dayのテーマは「TVETは人生を改善する」-フン・セン首相は、人的資源を、労働生産性を上げ、健全な価値観を創り出し、競争力のある能力を高め、外国からの投資を惹きつけ、新しいテクノロジーを享受する重要な要素とみなしていると述べました。彼は、急速に変化している経済インフラ、技術進歩の時代において、新しい仕事を創り出すために新しい技能を培う必要があると述べました。「職業技能は、安定した仕事、新しい仕事への速やかな移動を希望する国民にその可能性を提供する上で、極めて重要な役割を果たす」とのことです。
・首相はまた、これまで、政府は技術職業訓練システムに重点を置いてきたことを述べました。政府は、国の社会経済的な発展、テクノロジーや労働市場の急速な変化、人びとのより良い生活水準のための期待が高まっていることを踏まえ、職業訓練のセクターに重点的に投資をおこなってきたと述べました。この5年間、研修生、学生や労働者を含めて20万人を超える人びとが新しい技能訓練を経験し、良い仕事の機会を見出したり、自ら仕事を創り出したとのことです。
・現在、カンボジア国内にはISO(国際標準化機構)規格により品質を保証された公的な職業訓練機関が23あります。首相は国民に対して、訓練の活用を奨励しました。
・ADB(アジア開発銀行)は、カンボジアにおける職業訓練を強化するための努力は、新型コロナウィルス感染症のような危機に経済的に対処する助けとなるだろうと述べました。ADBはさらに、2014年以来、労働職業訓練省と協調し、約1億7,500万ドルを投資して改革を実行し、職業訓練プログラムを促進してきたと述べました。
・ADBの活動の中には、労働者が競争力のある技能や能力を磨くこと、カンボジアの産業労働力への訓練、重点的な4セクターである製造、建設、電気及び電子工学の人的資源の開発が含まれます。ADBは、教材の作成に寄与し、約50万人(その40%は女子)の高校生に質の高い教育を提供してきたこと、約3万4千人(その52.8%は女子)の職業訓練プログラムへの入学を支援してきたとも述べました。

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フン・セン首相が職業訓練の促進を呼びかけ(フレッシュニュースより)

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オンラインでのイット・ソムヘーン労働職業訓練大臣の挨拶

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オンラインでの座談会(左から2人目がNPIC副校長)