活動状況報告(2023年3月~5月)2

ネパール国「教育の質の向上支援プロジェクト」(通称IMENプロジェクト)は、小学1年生から3年生の児童の算数の基礎学力の向上を目指して、2019年から開始されました。以下に、2023年3月から5月に実施した活動を3回に分けてご紹介します。

啓発活動の実施

B.「教員・保護者会」 [パイロットLGの教員、保護者対象]

パイロット地方政府(LG )では、教員や児童だけでなく地域の保護者や住民も巻き込み、地域全体で算数や教育の重要性について考える機会を設けています。その一環で、2023年3月13日、5月10-12日に、マホタリ郡ピパラLGで教員・保護者会を実施しました。同LG内16校の校長、教員、保護者、総勢112名が参加しました。

このプログラムでは、低学年の児童にとっていかに算数教育が重要か、そしてベースライン調査結果を踏まえつつ保護者の家庭学習支援が果たす役割について、郡教育開発調整ユニット(EDCU)チーフとLGの地方教育ユニット(LEU)オフィサーが講義しました。その後、教員・学校運営委員会(SMC) メンバー・保護者代表からなる学校ごとのグループに分かれて、保護者の学校教育活動・家庭教育への関与を増やすための活動を計画し、すべての学校代表がアクション・プランを発表することができました。

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教員・保護者会に参加した保護者(マホタリ郡ピパラLG)

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LEUオフィサーによる講義(マホタリ郡ピパラLG)

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教員と保護者によるアクション・プラン発表(マホタリ郡ピパラLG)

マホタリは地域的に保護者の教育活動への関与や関心が低く、各学校で保護者会を実施しても参加率が低いことが課題でしたが、このプログラムでは保護者の関心の高まりが垣間見られました。実施後の簡易アンケートでは、「プログラムを通して子どもの学習における保護者の役割について考え方が変わったか」という問いに対して、8割を超える保護者が「質の高い教育が重要であり、子どもの学習のために親の役割が必要であることを理解した」と回答し、4割を超える保護者が「子どもの行動を改善する方法を理解した」と回答しました。また、「このプログラムに参加して子どもの学習をサポートする意欲が高まったか」という問いに対してはほとんどの保護者が賛同し9割を超える保護者が具体的な事例として「先生とコミュニケーションに自信が持てるようになった」と回答しました。自分たちの役割についても、「日々の家庭学習を見ること」「学校や家庭での学習環境を整えること」「定期的に授業などの学校での教育活動を見ること」「定期的に教員とコミュニケーションをとること」と捉えており、保護者の意識の向上がうかがえました。

プロジェクトでは今後も校長会を活用して、各学校のアクション・プランの実施状況や優良事例を確認し、フォローアップをしていきます。

C.「LG-Ward会合」 [パイロットLG内行政組織対象]

本プロジェクトは、パイロットLGにおいて特にLEU担当者と協力して小学1~3年生の算数力向上に向けた活動を行ってきました。しかしながら教室レベルでの学力向上の取り組みを促進していくうえで、LG傘下にある区(Ward)はより学校に近いアクターとして巻き込みが重要にもかかわらず 、教育担当部署が置かれていないWard関係者とは積極的に協調する機会を設けてこられませんでした。

そこで、各パイロットLGにて市長や区長を招聘し、プロジェクトがLGレベルで実施してきた活動や、学校が直面している課題を共有し、児童の学力向上のために区ができることを考えてもらう機会として、2023年4月から5月にかけて会合を開催しました。

この会合では教育科学技術省(MOEST)教育人材開発センター(CEHRD)職員によるプロジェクト概要説明のあと、児童の学力向上のために各市区が果たすべき役割と取るべきタスクについて意見交換し、アクション・プランを立てました。「毎月区内の学校対象に学力向上に関わる活動を実施する」、「区と学校間でより密な関係性を築き、定期的なモニタリングを実施し、学校が抱える課題に対する支援を行う」、「区・教師・生徒・保護者の代表を交えて学校教育の重要性と改善策を話し合う場を設ける」などの具体的なアクションが挙がっていました。

プロジェクト期間は残り1年を切りましたが、様々な行政レベルの関係者を巻き込むことで、学校教育の質を向上させるための持続的な体制の強化を図っていきます。

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LG-Ward会合の様子(ジュムラ郡タトパニLG)

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区長らがアクション・プランを議論(ジュムラ郡タトパニLG)

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意見交換(バクタプル郡チャングナラヤンLG)

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提言されたアクション(バクタプール郡チャングナラヤンLG )