活動状況報告(2023年7月~8月)

ネパール国「教育の質の向上支援プロジェクト」(通称IMENプロジェクト)は、小学1年生から3年生の児童の算数の基礎学力の向上を目指して、2019年から開始されました。以下に、2023年7月から8月に実施した活動をご紹介します。

エンドライン調査の実施

IMENプロジェクトで実施した一連の介入に対する校長、教員、保護者、児童の反応、ならびにそれらを通じた変化などを確認する目的で、2023年7月から8月にかけてパイロット地方政府(LG)の学校において校長及び教員に対してエンドライン調査(ELS)を実施し、プロジェクト開始時に行ったベースライン調査(BLS)との比較を行いました。

エンドライン調査結果①

小学校2-4年生児童に対して小学校1-3年生教科書レベルの算数テストを行った結果、新算数教科書・指導書が配布されただけでなく、IMENプロジェクトが自習教材の配布・活用や研修などの活動を実施したパイロットLGでは、新算数教科書・指導書が配布されたのみの非パイロットLGよりも、BLS-ELSにおける比較ですべての学年で統計的有意に向上していることが認められました。加えて、BLS時の2年生がELSに4年生になっていることからこの学年グループの算数テスト結果を比較したところ、BLS時には非パイロットLGの2年生の成績が有意に高かったにも関わらず、ELS時にはこれが逆転し、パイロットLGの4年生の成績が有意に高かったことも示されました。

エンドライン調査結果②

「一番好きな教科は算数」と答えた児童の比率を比較したところ、パイロットLGではその比率が調査対象の全学年で増加している一方、非パイロットLGでは2年生と4年生で減少しており、対照的な結果となりました。

エンドライン調査結果③

パイロットLGの児童のアンケート結果と算数テスト結果について分析したところ、全体としての相関は低いものの、「学校に行くのが好き」と「家で勉強する習慣がある」という2つの要因が、よりテスト結果に関係している可能性が高いことが分かりました。さらに質問項目間の相関係数をみたところ、「家庭での学習習慣」、「家庭の学習サポート」ならびに「親の関心」の3つで互いに弱-中程度の相関がみられました。

これらの結果から、IMENプロジェクトが実施してきた活動が徐々に学校レベルでの変化に繋がってきている様子がうかがえます。また本プロジェクトの対象が低学年児童であることから保護者の巻き込みを重要視してきましたが、そうした地道な活動が小さいながらも一定の成果を挙げたと考えられます。今後全国展開していくうえでは、こうした保護者や地域住民の巻き込みを含めて学校での活動を活性化していくことが重要になります。

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エンドライン調査の様子(マホタリ郡)

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エンドライン調査の様子(タナフン郡)

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エンドライン調査の様子(ジュムラ郡)

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エンドライン調査の様子(バクタプール郡)