77.Monthlyハイライト(2023年9月)

MaWaSU2最後となる短期専門家(濱野直樹専門家(さいたま市水道局:水道技術/施工監理))と川又由仁専門家(川崎市上下水道局:水質))が約1.5ヵ月間の業務を終えて帰国しました。MaWaSU2終了まで100日を切りラストスパートです。

9月の主なプロジェクト活動は以下のとおりです。

a. Output1:都県水道戦略策定支援OJT実施

都県水道戦略策定支援OJTを2回実施しました。1回目はサワンナケート県とカムアン県で開催し、カムアン県には隣のボリカムサイ県も参加しました。2回目はポンサリ―県、ウドムサイ県、サイニャブリー県で開催しました。ウドムサイ県にはボケーオ県、ルアンナムタ―県が参加、サイニャブリー県にはルアンパバーン県が参加しました。都県水道戦略については、これまでアンケートや地域事前説明等でDPWTと関わってきましたが、今回のように少人数対面で開催することで、今まで見えてこなかったことや県の状況がわかってきました。水道公社との協議も含めうまく進められている県があるほか、未だに作成の担当者すら決まっていない県もありました。また、今回はOJTということでDPWTや水道公社の参加者への手当の支給はしていません。そんな中でも各県からは参加があり、意欲が伺えます。DPWTに対してはこれまであまり注力してきませんでしたが、少しでもDPWTが主体的に進められるよう、引き続き活動を支援していきます。

b. Output2:パイロットプロジェクト第2バッチ巡回訪問

8月のサイニャブリー県とポンサリー県に引き続き、濱野専門家がパイロットプロジェクト第2バッチ・シェンクアン県を巡回しました。シェンクアン県も管路布設工事は完了、一部区域では給水が開始されており、残る区域は水質検査のみという状況でした。今回のシェンクアン県の拡張区域では、水道利用を促進するために給水装置を水道公社負担で設置しているとのことです。今後、給水装置設置とともに10月に水道教室の計画もあるとのことで、水道利用促進に様々な工夫を施していることが確認できました。

c. Output2:サワンナケート県デンサワン浄水場訪問

第1.5バッチで自動薬品注入設備を導入したデンサワン浄水場での残留塩素濃度データの変動が大きく、消毒効果が確認できない日もあることから、現地での残留塩素濃度測定、浄水場の運転管理、消毒剤の管理方法を確認するために訪問しました。現地では浄水場の機器とDPD法で測定した残留塩素濃度に大きな乖離があり、定期的な維持管理作業の不足(機器の校正・清掃)があることや、浄水処理を24時間でなく日中のみ稼働し、夜間は薬品注入設備を手動で停止していることが判明しました。また時間によっては浄水量が施設能力を超過しており、施設能力に応じた取水量の調整や水質管理に対する意識・体制改善が必要であり、サワンナケート県水道公社と協議する予定です。
また、使用している消毒剤の品質管理対策として、川又専門家が実際の消毒剤(さらし粉)をサンプルに希釈し、残留塩素濃度が製品の仕様に適合しているか実験を行ないました。仕様の約60%の濃度という結果で、攪拌してもなかなか溶解しない元々の材料の品質や、実験するまでに揮発した等の原因が考えられますが、購入する消毒剤の品質管理の重要性についてカウンターパートが理解できる機会となりました。

d. Output3:技術基準全国説明会の準備

10月以降の全国展開活動に向けて、DWS、及び3パイロット水道公社のSTTメンバーとOnline会議を行い、発表資料の作成を継続的に実施しています。今月中に水道公社が説明資料のドラフト作成し、今後はDWSと確認、最終化作業を進める予定です。

e. Output4:LWWA 施工監理&水質部会の開催

9月6・7日にルアンパバーン県水道公社にて、20・21日にカムアン県水道公社、26・27日に首都ビエンチャン水道公社にてLWWA主催の施工監理及び水質部会を開催しました。施工監理部会はOutput2及びさいたま市草の根活動の成果である6つのガイドラインを全国展開する目的で開催しました。①工事施工前の施工計画書・設計書の作成、②施工中の管布設・給水装置工事・資機材管理、③施工後の工事写真・図面管理について3パイロット水道公社のカウンターパートが講師となり、各ガイドラインの位置づけとともに解説され、管路工事の質の向上が期待されます。
水質部会では各県から水質管理の現況が報告され、抱えている課題・今後取り組むべき検討事項について意見交換がなされました。カウンターパートからは試薬・薬剤の調達方法の改善、水質管理に関するSOP(標準作業手順書)による業務改善などが提案されました。県によっては消毒・凝集剤の所定の濃度をテストした後に購入するなど品質確保に向けた取組みも紹介され、品質管理を含めて水道協会を介した共同購入など今後検討できれば、水質管理の強化に寄与できると考えています。

f. Output4:水道教室に参加

9月15日に首都ビエンチャン水道公社が市内のポンサワン中学校にて水道教室を実施しました。水道教室では水の大切さ、浄水のしくみ、水道メーターなどの設備を紹介し、水道に関するクイズや生徒参加型の手洗いの実践を行いました。。生徒が興味をひくような司会進行でテンポもよく、ハートをしっかりつかむようにささやなかプレゼントも準備しながら、大変盛り上がった水道教室となりました。ラオス式の水道教室でありますが、終始明るい雰囲気で、学生に水道に関心をもってもらう良い機会となりました。

g. 京都大学スタディーツアー受け入れ

9月13日にラオスの教育の質の向上を目指したプログラムである京都大学スタディーツアーを受け入れました。参加者は水質、宇宙工学、山火事など多種多様な分野を研究されている大学院生で、日本のほかオーストラリア、インドネシア、モザンピークなどからの留学生も参加しました。ツアーではチナイモ浄水場の施設を実際に見学し、メコン川からの取水施設や浄水場の仕組みについて大変興味を持った様子で、沈殿池に溜まる汚泥の洗浄方法や頻度、ろ過砂の購入先、故障した薬品攪拌機の代替方法などについていろいろな質問がありました。施設見学後、ラオスへのJICA支援事業のほか、水道セクターが抱えている課題として、水道公社による施設の維持管理、政府及び水道公社の資金源不足、水道料金改定の難しさなどについて意見交換をしました。

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a-1 カムアン県での都県水道戦略策定支援OJT後の集合写真

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b-1 シェンクアン県で管路布設現場を訪問する濱野専門家(右から3人目)

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c-1 デンサワン浄水場で残留塩素濃度を確認する川又専門家(右)

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c-2 消毒剤(さらし粉)を希釈して濃度テストを指導する川又専門家(左)

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d-1 技術基準説明会の準備会議の様子

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e-1 LWWA施工監理&水質部会(南部) in NPKM

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e-2 LWWA施工監理&水質部会(中部) in NPNL

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f-1 ポンサワン中学校にて水道教室

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f-2 生徒代表が手洗いの手順を皆に説明

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g-1 京都大学スタディーツアーの様子