78.Monthlyハイライト(2023年10月)
ラオスを含む上座仏教圏では僧侶がお寺に3ヵ月間籠る修行を終えるオークパンサー(出安居)を10月29日に迎え乾季の始まりを告げるとともに、翌日30日には首都ビエンチャンをはじめ各地でボートレーシング祭が開催されました。昨年の今ごろは新型コロナウイルスの影響を気にしていましたが、現在は影響はないと言い切れる状況です。MaWaSU2終了まで50日を切り最後のOJT、最後の訪問が続き、プロジェクトの最終盤を実感する毎日です。
10月の主なプロジェクト活動は以下のとおりです。
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a. Output1:都県水道戦略策定支援OJT実施
9月に引き続き、10月も都県水道戦略策定支援OJTを各地で予定しており、これまで都県水道戦略ドラフトの提出があった県には直接訪問し、策定承認に向けさらなる支援を考えていたところですが、DWSとの協議によりオンラインでの実施となりました。9月末時点で支援OJTを実施していなかった残り9県に対して、10月12日にオンラインで概要説明を行い、その後は各県ごとに個別にOJTを実施しています。10月末時点で4県実施できましたが、オンラインでの情報伝達能力は対面に劣ることや、準備不足もあり思うように進められない点がありますが、残りの期間に5県を対象にOJTを実施していきます。 -
b. Output2:サワンナケート県デンサワン浄水場対応
10月12日にパイロットプロジェクト第1.5バッチで自動薬品注入設備を導入したデンサワン浄水場における水質管理の改善をテーマに、サワンナケート県水道公社を訪問しました。デンサワン浄水場では、9月に訪問した際に濁度が水質基準の5NTUを超過していたほか、機器の校正や清掃など維持管理面でも課題があったことから、総裁、副総裁にも出席いただき、水質管理体制の改善方法について意見交換をしました。大きな問題点としては、消毒剤の濃度が不適切なため浄水場での残留塩素濃度の変動が大きいこと、24時間浄水処理をしておらず、取水ポンプが過剰であることによる浄水処理への負荷が高いことがわかりました。適量な消毒剤を入れること、薬品使用量、清掃、取水・配水量の記録といった維持管理方法の見直しのほか、浄水処理能力に応じるための取水量の調整・ポンプの取替えについて、浄水場運転方法を改善する水道公社の方針を確認できました。地方の浄水場では運転マニュアル等が不整備であり、取水から浄水過程における運転管理方法が場当たり的な対応が多く見受けられます。改善対策として浄水場のSOPなどを整備していくことが有効であると考えています。 -
c. Output2:パイロットプロジェクト第2バッチ・シェンクアン県水道教室
10月19日にパイロットプロジェクト第2バッチ実施県であるシェンクアン県が水道教室を実施するとのことで訪問しました。パイロットプロジェクト第2バッチは(1)水道教室の実施、(2)管路布設工事、(3)水圧管理体制構築、(4)水質管理体制構築の4つの活動から構成されており、今回の訪問は(1)水道教室の実施にあたります。水道教室は先行フェーズMaWaSU、MaWaSU2を通じて全国の水道公社で実施され、効果を上げているためパイロットプロジェクト第1.5バッチ、第2バッチでもプロジェクト活動に含めました。これらの活動により、単純に管路を拡張するだけでなく、水道利用者への安全性理解の促進、水圧・水質といった水運用管理面についても水道公社は配慮することになりました。パイロットプロジェクト第1バッチの申請で多く見られた「予算がないので管路拡張をしたい」や「予算がないので施設改良をしたい」といった水道関連工事だけを見た近視眼的な発想から本来の幅広い水道事業運営へ視野が広がった活動になりました。 -
d. Output3:技術基準全国説明会の開催
10月4日に技術基準の全国説明会を開催しました。会議にはオンラインで全県のDPWT及び水道公社の幹部が参加し、DWSから技術基準作成までの経緯と基準の概要の周知がなされました。会議の参加者からはADB等のドナーにも情報共有が必要であること、詳細を理解するための研修開催のリクエストがありました。11月に3地域に分かれてMini-Workshopを開催し、技術担当者の理解促進を図る予定です。 -
e. Output3:技術基準Mini-Workshop準備会
11月に開催する技術基準のMini-Workshopの開催に向けてDWSとSTTメンバーとOJTを実施しました。STTメンバーである3水道公社の理解促進、責任意識を向上するために、各章に担当を決めずに3公社ごとに発表資料を作成する手順で準備を進めています。準備会はC/Pの意見交換の場とし、基準に記載されている図表などお互いに理解が同じかどうか、自発的に説明しながら内容理解を深めています。 -
f. Output4:LWWA 事務局担当者会議の開催
10月10日にLWWAの4水道公社の事務局担当者と、9月に開催した部会のレビューと今後の活動について意見交換をしました。部会の進行は円滑にできた一方で、協会の事務手続きなどの問題がなかったかを確認しました。11月の技術委員会の開催に向け、部会から技術委員会への報告事項、今後の活動内容の検討などこれまでプロジェクトが企画・立案している部分を事務局とともに考え、活動を徐々にシフトしていく共通認識をもっていることを実感できました。
また、ベトナム水道協会のイベント(Vietnam Water Week)に参加したC/Pからは、他国の協会のあり方や取組みなどをDWSとともに意見交換できたことにより、互いが協力しあえば、水道の発展に寄与できるという意気込みも感じた会議となりました。 -
g. Output4:ルアンパバーンにてOJT活動
10月24~27日にルアンパバーン県水道公社(NPLP)を訪問し、11月に開催する技術基準Mini-Workshop、MaWaSU2 Closing Seminarの準備をしました。NPLPとの全体ミーティングでは、スーリット総裁、チャントン副総裁も参加しMaWaSU2の集大成のセミナーということで、これまで5年半の活動成果をしっかり伝えるよう準備をしています。NPLPでは、ビエンカム、チョンペット、ナムトゥアム等、各郡で新しい水道施設が整備されています。今後地方の営業所が増えることを見越し、プロジェクト成果であるガイドラインやマニュアルなどを県内で研修会などを開催し、講師の育成と営業所の職員のレベルアップにも注力している報告がありました。プロジェクトが目指している目標を理解し、目標を達成するための強いリーダーシップとC/Pの積極的な姿勢に対して数値では表すことのできない活動成果を実感しました。 -
h. 鳥取西高等学校スタディツアー受け入れ
10月6日に鳥取県立鳥取西高等学校10名(教師2名・生徒8名)のスタディツアーとして、水道教室とチナイモ浄水場見学を実施しました。水道教室は首都ビエンチャン郊外の水道未普及地域で、水道の説明及び手洗い促進を行いました。住民からは水道がほしいものの、初期費用が高額であること、集落の近くまでの配水管整備の要求があり、生徒さん達は水道の仕組みやそうしたやりとりも熱心に聴講され、手洗い促進のデモンストレーションにも参加いただきました。また、チナイモ浄水場では浄水処理システムを紹介しつつ、生徒さんからMaWaSU2の予習内容を発表していただいた後に、皆さんと意見交換をしました。想像以上にきれいに浄水されていること、電気と水道公社の違い、郊外の道路の劣悪さなどラオスのリアルを体験された様子で、生徒さん達の感性が専門家にとっても刺激になりました。
サワンナケート県水道公社と協議する野澤専門家(左
サワンナケート県デンサワン浄水場に設置されている自動薬注装置
水道教室で小学生とともに水質を確認する水道公社職員
水道教室で小学生に挨拶する野澤専門家(右)
技術基準全国説明会の集合写真
LWWA事務局担当者会議(Online)の集合写真
鳥取西高等学校の生徒が手洗いデモンストレーションに飛び入り参加
チナイモ浄水場見学の様子