81.MaWaSU2を振り返って(野澤敦司専門家)

MaWaSU2の後継案件であるMaWaSU3開始(2024年2月14日)にあたり、MaWaSU2でサブチーフアドバイザー/水道技術を担当された野澤敦司専門家(川崎市上下水道局)からメッセージをいただきました。

MaWaSU2を振り返って、赴任直後COVID-19(新型コロナウイルス感染症)によりロックダウンされたことから始まり、他県へ移動することもできずに自宅でOnlineによるOJTやカムアン県やサイソンブン県の工事設計図と睨めっこをしていたことを思い出します。制限が解除され、3パイロット水道公社とのOJT、ラオス水道協会(LWWA)を交えたMini-Workshop開催、技術基準に関して公共事業運輸省・水道局(DWS)との度重なる非効率で計画性のない協議、2度の本邦研修引率、パイロットプロジェクトBach1のボリカムサイ県、Batch1.5のシェンクワン県、サラワン県、サワンナケート県、Batch2のポンサリー県、サイニャブリー県、シェンクワン県のために、プロポーザル審査、設計図チェック、現場確認、事後評価など活動していたら、あっという間にプロジェクトが完了した感じです。

MaWaSU2では地方の浄水場に訪問する機会が多くありました。地方は日量数百~数千m3規模の浄水場が一般的で、日本の水道システムとは異なりますが、限られた人材が色々な業務を掛け持ち、優秀でやる気のある職員にも多く出会うことができました。郡都と言われる地域でも、住民の暮らしは豊かとは到底いえず、竹の高床式住居で自給自足をしている生活の地域もあり、水道事業が厳しいからといって短絡的な料金値上げは難しいことを実感しています。一方で都会では宮殿づくりのような豪邸が立ち、国道でさえも修理ができない道路を高級な4WDが走り抜けている現状が、ラオス国の社会構造をあらわしていると思います。税金や富の配分がもっとうまくできないものか考えさせられる日々でした。

技術基準は施設産業である水道にとって非常に重要でありますが、輸入に頼った流通、資機材の品質、地方までのアクセスの悪さ、作業員の技量など技術基準を遵守するには、まだまだハードルは高い状況です。特に行政機関のトップダウン方式であるラオススタイルには大きな問題があり、小さい会議一つとってもトップの独断的な決定や思いつきによる日程直前の予定変更など、担当のカウンターパート(C/P)やナショナルスタッフにも大きな負担がありました。一方で苦労をともにした若手職員とは信頼関係を築き、次の世代は日本のやり方も理解され着々と育成されており、課題や改善に向けたアイディアなど上司に面と向かっては言えない職場環境ですが、内に秘めたMaWaSUイズムは引き継がれていると思います。

水道公社とは長年のつきあいもあり、プロジェクトの方針・目標は共有できており、常に前向き思考で活動ができました。プロジェクト期間中にラオス水道協会(LWWA)も設立されて、オール水道公社を対象に水道を発展させる機関として期待しています。また、本邦研修はC/Pの最大のモチベーションといっても過言ではないもので、2023年に1月から再開でき、受け入れていただいた事業体等のラオスの立場に配慮した講義や温かいおもてなしもあって、参加したC/Pの充実感に満ちた表情が印象的でした。

最後に、C/Pをはじめ、JICA、4水道事業体、ナショナルスタッフ、専門家の皆様のおかげで、大きな成果をあげることができました。幸いにもMaWaSU3も継続できる見込みであり、私の職責は果たせたと勝手ながら思っています。ラオスの水道一家とともに過ごした貴重な3年間でした。MaWaSU10 ピーレオ、コープチャイ ライライ ドゥー!!(MaWaSU10年ありがとうございます!!)