“Around the World in One Day”イベントでの日本文化紹介ブースの出展

アレキサンドリア図書館に併設の子ども図書館では、去る11月29日にユニセフやUNHCRのパートナー機関であるカリタス・エジプトの支援の下、地元の子どもたちに世界の国と文化を紹介する“Around the World in One Day”(世界を知る1日)イベントが開催されました。同イベントに対してE-JUSTは日本紹介ブースを出展し、「日本文化」科目の教員、日本文化サークルの学生たちと日本人留学生、JICA海外協力隊員、プロジェクトメンバーが参加しました。参加した日本人留学生 南野花さんは当日の様子を以下のようにレポートしています。

11月29日、アレキサンドリア図書館小ホールで開催された「حول العالم في يوم (世界を知る1日)」イベントにE-JUSTの学生たちと参加しました。11月20日が“世界こどもの日”であることにちなんで開かれたこのイベントでは、子どもたちがエジプト国内や中東、アフリカ諸国の文化を実際に体験しながら学んでいました。我々E-JUSTは日本を代表するということで、唯一アジアからの参加でした。お手玉やけん玉、折り紙など人気の遊びコーナーはもちろん、着物(浴衣)と書道のコーナーは職員や引率の先生方にも大人気で、一度も列が途切れないほどでした。そして、こうしたアクティビティを一緒に創り上げてくれたのが他でもないE-JUSTの学生たちで、日頃から学内の「日本語クラブ」や「日本文化の授業」、日本でいう「サークル活動」を通して日本の伝統文化に親しんできた彼らが、率先して子どもたちに話しかけ、一緒にけん玉をしたり、折り紙を折ったり、簡単な日本語をアラビア語で教えてくれたりしていました。

私が担当していた書道のアクティビティは、来てくれた子どもたちの名前を漢字やひらがな、カタカナで書くというものでした。私の卒論テーマがちょうどエジプト人の“名前”だったということもあって、子どもたちに名前の意味や由来を聞きながら、日本語での音や意味を合わせて工夫をして書くことに挑戦しました。また、漢字や左から右への書き方(アラビア語は右から左に文字を書きます)に興味をもって、「かして?」とジェスチャーをしてくれる子や、私の名前を聞いて「それをアラビア語で書くね!」と言ってくれた子もいました。最終的にはあまりの大盛況さに、授業でひらがなを覚えたてだった学生も腕をまくり、途中から手伝い始めてくれ、「これであってる?」や「『そ』ってどうやって書くの?」と時々一緒に確認しながら、たくさんの子どもたちや職員の皆さんと日本文化の趣を分かち合うことができました。

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ムハンマドさん “夢の波が入ってくる窓”としました。

日本ブースで伝統的な遊びや文化を紹介していたように、他のブースでもたくさんのアクティビティが用意されていました。遠くから「ポォコ」と西アフリカの伝統楽器「バラフォン」の音が聞こえ、エジプト南部に住むヌビア民族のブースでは色鮮やかな手工芸品や並べられていました。E-JUSTブースのお隣、シリアブースでは中東にゆかりのある帽子「フェズ」をかぶった子どもたちが、レバント地域に伝わる民族舞踊「ダブケ」をリズムよく踊っていました。会場で飛び交う言語はアラビア語、英語、フランス語、そして日本語など実に様々で、子どもたちは覚えたばかりの日本語で何度も話しかけてくれたり、日本に興味があって...と写真をお願いされることもありました。

朝9時ごろ始まったイベントも15時頃にはたくさんの拍手とともに閉会式を迎えました。私はその中でも、とある女性の締めくくりのスピーチにあった「المستقبل للاطفال(子どもたちの未来)」という言葉が印象に残っています。今回のイベントでは日本や中東、アフリカの文化を楽しむ子どもたちの笑顔やエネルギーを直に感じることができましたが、一方で、この地域全体で起こる紛争や貧困、気候変動問題は今も山積みの状態です。物価が上がり、人口も増え続ける中で、子どもたちや彼らの未来は“後回し”になってしまうほど毎日が手一杯な生活も現地では肌で感じます。彼女の一言を聞いたときに、そんな状況で外からきた私たちには何ができるのかを強く考えさせられました。

私の好きな歌に「It’s a small world(日本語訳: 小さな世界)」があります。簡単なリズムと歌詞で、世界中のいろんな言語、もちろんアラビア語にも訳されています。世界を広く見渡せば笑うことも涙が出ることも両方ある。でも泣いている子に手をつないで助け合えば、みんなが輪になって笑顔になれるという意味が歌詞に込められています。

私がエジプトに来てから初めて知ったことの一つに、「EJS(エジプト日本学校)」の存在があります。“日本式教育”を行うことで、学力以外の主体性や協調性を養うことを目的とするEJSは現在、エジプト国内に約50校ほどあり、カリキュラム自体は全国約18,000の小学校で取り入れられています。そして、各校配属された海外協力隊の先生方が日夜現場で子どもたちの未来を考え、今の教育を作る仕事をされています。

今回、E-JUSTが日本を代表して、遠い異国のエジプトのこのイベントに参加できたのも、EJSをはじめとする国際協力の取り組みや成果があるのも、長い年月をかけて一人ひとりの日本人が構築してきた現地との“つながり”のおかげであると感じました。実際に、私がこの半年間E-JUSTで学ぶきっかけを得た日本の所属大学との交換留学協定もそのうちの一つです。

最後に、この場をお借りして、一緒に日本文化を分かち合う活動を行ってくれたE-JUSTの学生の皆さん、JICA関係者様、そして私のアカデミックアドバイザーであり、イベントを終始サポートしてくだったAmal Refaat先生に心より感謝を申し上げます。エジプトの子どもたちの明るい笑顔とともに、E-JUSTやEJSが紡ぐ日本とエジプトとのつながり、そして世界がひとつになる瞬間を感じた1日でした。

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大阪大学外国語学部アラビア語専攻4年生
南野 花

本プロジェクトでは、いずれE-JUSTがアレキサンドリア地域の日本語や日本学に関する教育・研究の拠点となることも見据えて、同学が日本文化について紹介するときには浴衣や書道用具などを貸し出し、その活動に協力しています。

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来場した子どもたちにけん玉の遊び方を紹介するE-JUSTの学生

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自分の名前が筆で書かれるのをじっと見つめる子どもたち。左の子は浴衣体験中。