JSTさくらサイエンスプログラム(東京工業大学)

東京工業大学により採択されたJSTさくらサイエンスプログラムが2023年12月11~15日に実施されました。「日本型工学教育研究の体験」と題した本プログラムは、(1)学生の研究発表と議論を中心とする研究室ゼミや、学部最終学年の学生が研究室に所属して卒業「研究」をするなどの日本式工学教育研究のスタイルを体験して理解することと、(2)国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)福島再生可能エネルギー研究所(FREA)を見学して再生可能エネルギー分野の先端科学技術に触れることを目的としたものです。本プログラムにより、E-JUSTエネルギー資源工学科(ERE)から、学科長Hamdy AboAli Hassan教授、学部3年生7名と4年生2名の計10名が東京工業大学へ招へいされました。

本プログラムは、関口秀俊教授、小酒英範教授、齊藤卓志教授、森伸介准教授、大川原真一特任教授らの研究室ゼミ(各2時間)への参加を主な活動としました(写真1)。それぞれの研究室ゼミで東京工業大学およびE-JUST双方の学生が研究発表をし、その内容について議論をすることで、日本式工学教育研究を実体験しました。研究室ゼミで研究への理解を深めた後に実験室を見学し、研究室ごとにその研究分野に特化した独自の実験設備を構築することで研究を高度化していることを理解しました。

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(a) Rowan Ibrahimさん(左)とNada Abdelsattarさん(右)

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(b) Mark Anisさん(左)とMarwn Abdelaalさん(右)

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(c) Mai Salemさん

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(d) Ahmed Tohamiさん

写真1 研究室ゼミで研究発表をするERE学部生

キャンパスツアーでは、教育研究だけでなく鳥人間コンテストやロボコンなどの課外活動でも学生が自由に使える工作機械や分析機器を備えたものつくり教育研究支援センター、地下に広大に広がる図書館、学生主体の「つながる」場である国際交流拠点Taki Plaza、大きく綺麗な学生食堂、専門書からコンピュータ機器、文房具、白衣、食品まで購入できる生協店舗、一般の学生や教職員がスポーツを楽しめるグラウンド等を興味深く見学しました(写真2)。

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写真2 キャンパスツアー中、環境エネルギーイノベーション棟をバックにグラウンドにて

福島県にあるFREAへ移動する際は、新幹線の乗車も楽しみました。FREAの広大な技術実証フィールドでは、風力発電や水素貯蔵などの様々な再生可能エネルギー技術が大きな実機で検証されているのを興味深く見学し、FREAのような研究所の存在、そこで働く研究者が日本の再生可能エネルギー産業の発展、日本のエネルギー環境問題への取り組みを支えているのを理解しました(写真3)。さらに屋内の技術資料展示スペースでは、地熱エネルギーや水素吸蔵材料等の先端技術についてわかりやすく解説していただき、他では得難い学びとなりました。

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(a) 福島再生可能エネルギー研究所(FREA)

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(b) 再生可能エネルギー技術実証フィールド

写真3 福島再生可能エネルギー研究所(FREA)の見学

プログラム最終日のアンケートでは、学生から、<研究室ゼミ>「とても活発で組織化されている」「東京工業大学の大学院生や教員の前でプレゼンテーションをして自信になった」「東京工業大学の大学院生のプレゼンテーションはとても洗練されており内容も勉強になった」< FREA>「これまで勉強してきた様々なエネルギーシステムを実際に見ることができて興味深かった」<ものつくり教育研究支援センター>「東京工業大学の学生が実際に活動しているところやその作品を見ることができ、自分もそれらの課外活動に参加したいと思った」<プログラム全体> 「Overall it was a lifetime experience that enriched my knowledge about science and Japanese culture」などの声が寄せられました。

本プログラムでは、研究室ゼミでERE学部生が見せた英語力、プレゼンテーションスキルの高さと、研究に対する理解の深さが印象に残りました。ほぼ全員が、日本の大学院で勉強したい、日本で研究者として働きたい、日本の企業で働きたいなどとアンケートで回答したのは、本プログラムの大きな成果です。やはり、日本へ来て、大学や研究所を見て、研究に触れてもらう、研究を体験してもらうことが、科学技術人材を日本へ惹きつけるのに最も効果的なのだとあらためて感じました。彼等には、近い将来、是非希望を叶えて欲しいと思います。

著:大川原真一 東京工業大学特任教授