カトマンズ・チェンナイ視察旅行で見てきたもの

10月5日から9日まで、プロジェクトの山田浩司専門家とプロジェクトマネージャーのカルマ・ケザン・ユーデンCST電気通信工学科講師、カウンターパートでラボ専属のテンジン・ドルジ技師は、インド・チェンナイのインド工科大学マドラス校リサーチセンターで開催された、障害者自助具技術の年次国際カンファレンス「EMPOWER(エンパワー)」の第6回大会に出席しました。

このカンファレンスには、ファブラボCSTの有力ユーザーである、CSTの学生も2名同行し、またテンジン技師と山田専門家は、チェンナイ入り前の10月2日から4日までネパールの首都カトマンズに立ち寄り、ファブラボネパールとの連携協議も行いました。

EMPOWERカンファレンスは、インドで障害者自助具の技術開発や利用に携わる企業家、研究者、学生、障害当事者、リハビリ関係者、医療関係者、政策立案者、市民社会組織関係者、投資家、ファブスペース関係者などが、一堂に会するフォーラムです。

自助具技術も、身の回りにある材料を用いて障害当事者自身が作った、低コストで利用者負担可能なローテク自助具から、研究者が所定の研究開発プロセスを経て、資金調達も行って試作から実装につなげたハイテク自助具まで、インドで生まれた自助具技術の見本市のようなイベントでした。

ブータンは、ヘレンケラーの出身校としても有名な米国のパーキンス盲学校の国際ネットワークからの招待で、窓口は米国にある民間財団「ブータン財団」が務め、派遣団を編成しました。障害児特別教育指定校「SENスクール」の校長、ティンプーのスーパーファブラボ、CSTのカルマ・ケザン講師などが正式派遣団員です。

私たちのプロジェクトが支援するファブラボCSTは、7月にブータンで開催された世界ファブラボ会議(FAB23)の一環で行われた「ファブ・ブータン・チャレンジ」において、地域のSENスクールに通う障害児向け自助具の試作をテーマにして、「大衆賞(People’s Choice Award)」を受賞しました。その後、いくつかの自助具技術は科学技術単科大学(CST)4年生の卒業研究として取り上げられ、現在学生による研究が進められています。このため、カルマ・ケザン講師から、ファブラボCSTとしても関係者を派遣してはどうかの提案があり、4人の追加派遣が決まりました。

EMPOWERカンファレンスでは、ファブラボCST派遣チームはそれぞれ別の分科会やワークショップ、展示ブースなどをまわり、情報収集とネットワーキングに努めました。また、カンファレンス終了後には、タミルナドゥ州政府の支援で設立された自助具博物館(Museum of Possibilities)や、現地NGOヴィディヤ・サガル(Vidya Sagar)が運営する障害児特別教育学校と職業訓練校を見学し、障害児教育や障害者向け職業訓練の現場での自助具開発と実装の状況を見学しました。

出張終了後、ブータン派遣団員は10月17日(火)にオンラインで今後の取組みについて話し合い、ファブラボCSTでは、メイカソン開催、冬期休暇期間中の学生インターンによる自助具試作、長期的には自助具製作技術のCSTカリキュラムへの取り込みの検討などに取り組むことになりました。このプロセスは、当プロジェクトマネージャーのカルマ・ケザン講師が主体的にリードしており、技術協力プロジェクト終了後のファブラボCSTの活動の柱と位置づけられます。

なお、カトマンズ訪問では、山田専門家とテンジン技師はファブラボネパールを訪問し、彼らのプラスチック再利用プロジェクトの実施経験を聴取し、プラスチック再利用のための施設の整備状況を見学しました。

ファブラボネパールは、「インパクトハブ・カトマンズ」という民営ビジネスインキュベーション施設の一部門と位置づけられ、プラスチック再利用もビジネス化が当初から指向されていました。CSTではファブラボと学生インキュベーション施設が別々の経緯で設立され、併存していますが、プロジェクト終了後のファブラボCSTの経営持続性強化策として、山田専門家は、両者の連携強化の必要性について、帰国後CST経営層に対して提言しました。

EMPOWERカンファレンスホームページ
https://empower23.respark.iitm.ac.in/

タミルナドゥ州自助具博物館「Museum of Possibilities」ホームページ
https://tnmop.in/

現地NGO「ヴィディヤ・サガル(Vidya Sagar)」ホームページ
https://www.vidyasagar.co.in/

インド工科大学マドラス校(IIT-M)リサーチパークホームページ
https://respark.iitm.ac.in/

IIT-Mリサーチパーク発の車椅子スタートアップ「ネオモーション(NeoMotion)」ホームページ
https://www.neomotion.in/

インパクトハブ・カトマンズ(Impact Hub Kathmandu)ホームページ
※ファブラボネパールのページは、この中に含まれます。
https://kathmandu.impacthub.net/

IITマドラス校リサーチパークのアショク・ジュンジュンワラ所長に説明を伺う(写真/山田浩司)

IITマドラス校リサーチパークのアショク・ジュンジュンワラ所長に説明を伺う(写真/山田浩司)

カンファレンスでは、障害当事者を招いた自助具即席製作のワークショップも(写真/山田浩司)

カンファレンスでは、障害当事者を招いた自助具即席製作のワークショップも(写真/山田浩司)

メイン会場での開会式の様子(写真/山田浩司)

メイン会場での開会式の様子(写真/山田浩司)

場外で行われたネットワーキング。ユニバーシティカレッジ・ロンドンのグローバル障害イノベーションハブのキャシー・ハロウェイ教授との面談(写真/山田浩司)

場外で行われたネットワーキング。ユニバーシティカレッジ・ロンドンのグローバル障害イノベーションハブのキャシー・ハロウェイ教授との面談(写真/山田浩司)

障害当事者もイノベーターになることができると強調された分科会(写真/山田浩司)

障害当事者もイノベーターになることができると強調された分科会(写真/山田浩司)

障害者自助具博物館のトイレの展示(写真/山田浩司)

障害者自助具博物館のトイレの展示(写真/山田浩司)

障害児特別教育校にあった、切り紙を使った家具製作工房(写真/山田浩司)

障害児特別教育校にあった、切り紙を使った家具製作工房(写真/山田浩司)

障害児特別教育校講堂をお借りして、派遣団内で意見交換(写真/山田浩司)

障害児特別教育校講堂をお借りして、派遣団内で意見交換(写真/山田浩司)

ブータン派遣団(写真/山田浩司)

ブータン派遣団(写真/山田浩司)

ファブラボネパールのプラスチック再利用施設を見学(写真/山田浩司)

ファブラボネパールのプラスチック再利用施設を見学(写真/山田浩司)

インパクトハブ・カトマンズをバックに、ブータンとネパールのファブラボ関係者が集合(写真/山田浩司)

インパクトハブ・カトマンズをバックに、ブータンとネパールのファブラボ関係者が集合(写真/山田浩司)