カンファレンスでファブラボCSTの存在感を示す-FAB23への協力

ブータンで開催された第18回世界ファブラボ会議(FAB23)の後半、7月24日(月)から28日(金)までの5日間は、「カンファレンス」と位置付けられ、首都南部にあるスーパー・ファブラボを会場に、著名な専門家、政治家などによるシンポジウムのほか、FAB23参加者が企画運営するさまざまなトークイベントやワークショップなどが連日開催されました。

26日(水)、スーパー・ファブラボが主催した「ファブラボ・ブータンネットワーク」のパネルトークに当プロジェクトの山田浩司専門家がファブラボCSTを代表して登壇し、2016年から見てきたブータンにおけるデジタルものづくりの普及の経緯や、ファブラボ運営上の課題について発言しました。

翌27日(木)には、「コミュニティラボとしてのファブラボCSTの1年」と題したパネルトークを主催し、チェキ・ドルジCST学長、カルマ・ケザン・ユーデンファブラボCSTマネージャーをはじめ、5人の関係者が登壇して、活動紹介を行いました。登壇者のうち2人は、2017年7月にブータンで初めてオープンしたファブラボ「ファブラボ・ブータン」の初期のスタッフです。ファブラボCSTが、ブータンにおけるデジタルものづくりで初期に輩出された人材も活用している姿を示すことができたセッションでした。

また、ファブラボのグローバルネットワークには、「ファブラボと国連SDGs」というワーキンググループがあり、5月初旬から世界中のファブラボに対してSDGsのどのゴールを優先しているかを尋ねるアンケート調査を実施していますが、ファブラボCSTはブータンから初めてこのアンケートに回答したことが評価され、ペットボトルをリサイクルして作られた生地にSDGsロゴをプリントしたバナーの贈呈を受けました。

ファブラボCSTは他の行事の開催にも協力しました。ブータン脳卒中財団(BSF)、JICA新規事業「FAB x国際協力」、ファブラボ品川の共催事業に3Dプリンターを提供し、イベント開催に協力しました。

23日(日)の「ファブ・フェスティバル」会場での3Dプリント自助具の展示に加え、25日(火)にはBSF事務所を会場に「オープン・デイ」が開催され、その場で脳卒中回復者の方にインタビューして、自助具のデザイン検討と出力を行いました。また、オープン・デイに来場した地元の小学校の生徒を対象とした3Dモデリングの即席ワークショップも開催され、山田専門家とCSTの学生ボランティアが、ファブラボCSTの3Dプリンターを使用し、小学生のデザインの出力を支援して、初の3Dデザイン成果品を持って帰ってもらうという活動を行いました。

28日(金)には、上記三者の共催によるハンズオン・ワークショップ「小さいけど役立つものを作ろう-障害者向け自助具づくりミニ・メイカソン」が開催され、山田専門家とファブラボCSTの3Dプリンターが動員されました。FAB23カンファレンス入場者が、ブータンの障害者ひとりひとりに合った自助具のアイデアを考える機会を提供するというこのワークショップには、障害者職業訓練施設「ダクツォ」から、脳性麻痺により障害を持つことになった生徒3人が「ニードノウア」(どのような支援が必要なのか、ニーズを知っている人の総称)として参加しました。

別の記事でもご紹介した「ファブ・ブータン・チャレンジ」を除き、FAB23カンファレンス期間中に開催されたサイドイベントの中で、ブータンの市民社会組織を巻き込んで、外国からの参加者の知見をブータンの課題解決に少しでもつなげようと試みたワークショップは、この1件のみでした。

JICAとしても、FAB23カンファレンス期間中のサイドイベント開催には協力しました。28日(金)午後には、「ファブラボと国際開発パートナー-日本の開発協力を事例として」を主催し、当プロジェクト山田浩司専門家の司会進行により、山中敦之JICA国際協力専門員(元ルワンダ派遣専門家)、青木翔平ケニア派遣専門家(ジョモ・ケニヤッタ農工大学)、プラセティヤ・クルニアワンさん(インドネシア・ガジャマダ大学)、山田智之JICAブータン事務所長、山中睦子隊員(ブータン・手工芸)が、それぞれの任国での活動やプログラム実施状況について紹介しました。

FAB23カンファレンスのオープニング。外国から300人以上のファブラボ関係者が参加(写真/山田浩司)

FAB23カンファレンスのオープニング。外国から300人以上のファブラボ関係者が参加(写真/山田浩司)

ファブラボ・ブータンネットワークのパネルトークで発言する山田浩司専門家(写真/Krishna Subba)

ファブラボ・ブータンネットワークのパネルトークで発言する山田浩司専門家(写真/Krishna Subba)

ファブラボCSTを紹介するパネルトーク(写真/松尾英徳)

ファブラボCSTを紹介するパネルトーク(写真/松尾英徳)

SDGsバナーを受け取った竹村真郷プロジェクト短期専門家(左)(写真/Pieter van del Hidjen)

SDGsバナーを受け取った竹村真郷プロジェクト短期専門家(左)(写真/Pieter van del Hidjen)

ファブ・フェスティバル会場で3Dプリント自助具の説明を行うCST学生ボランティア(写真/山田浩司)

ファブ・フェスティバル会場で3Dプリント自助具の説明を行うCST学生ボランティア(写真/山田浩司)

オープン・デイで3Dモデリングの演習に取り組む地元小学生(写真/松尾英徳)

オープン・デイで3Dモデリングの演習に取り組む地元小学生(写真/松尾英徳)

FAB23会場でのハンズオン・ワークショップ(写真/山田浩司)

FAB23会場でのハンズオン・ワークショップ(写真/山田浩司)

最終日のJICAパネルトーク(写真/小田祥子)

最終日のJICAパネルトーク(写真/小田祥子)

カンファレンス会場では、コミュニティ・パートナーとしてJICAのロゴも見られた(写真/山田浩司)

カンファレンス会場では、コミュニティ・パートナーとしてJICAのロゴも見られた(写真/山田浩司)