FESA(Forest Ecosystem Analysis)により動き出す農民による森林保全活動
現在プロジェクトによる森林管理組合向けファーマーフィールドスクール (FMC-FFS)は、第2サイクルを迎え、農民がファシリテーター役を担うFMC-FFSの実施を支援しています。そのサイクルも終盤にさしかかる中、育成中の8名の農民ファシリテーターを含め25名を対象にしたファシリテーター研修(ToF)を2025年7月14日から19日の6日間にわたり実施しました。
主な研修内容は、卒業へ向けた評価方法やその具体的ステップ、Assisted Natural Regeneration(天然更新補助)活動のフォローアップです。FMC-FFSの大きな特徴は、農民が主体的に森林の構造や動態を理解できるFESA(森林生態分析)にあります。農民はFESAによる観察を通じ、課題を見いだし、自ら行動計画を策定します。
本プロジェクトでは、こうした課題へ対する実践的なソリューションとして、Assisted Natural Regeneration(天然更新補助)を推進しています。具体的には、農民自身が郷土樹種の苗木を近隣の林から採取し苗畑で育成する「山引き苗」を活用した森林回復のための森林内への補植活動(Enrichment Plantation)や、天然更新木の保護です。農民は実に多種多様な山引き苗を近隣の森林から採取し、苗畑で育成を既に開始しています。その山引き苗の樹種数は、自生のコーヒーノキも含めて14種類を確認しています。このような農民主導による山引き苗育成は、エチオピアではおそらく初の取組であり、先進的な試みとして現地でも注目を集めています。
さらに、こうした多様な郷土樹種の苗木を、樹種毎に異なる特性に合った適切な場所に植栽するため、農民の伝統知を活用しつつ、「Tree Species–Site Matching Assessment(樹種と植栽適地のマッチング評価)」ワークショップを今回の研修において初めて導入・試行しました。これにより農民(および普及員等の技術指導する側においても)は、光条件など樹種毎の適性を踏まえた植栽が可能となり、苗木の活着率向上が期待されます。
JICAは今後も、森林利用者の参加型学習と能力強化を通じて、エチオピアにおける持続可能な森林および自然資源管理の推進を支援してまいります。
本プロジェクトの詳細は、以下のウェブサイトよりご覧いただけます:
https://www.jica.go.jp/project/ethiopia/013/index.html
ToFで作成した「樹種・植栽適地マトリクス」
縦軸に光条件(太陽、太陽と雲、黒い雲でそれぞれ日向、中庸、日陰を表現)、横軸に水分条件を水滴の数でそれぞれ湿潤(水滴4つ)、中庸(水滴2つ)、乾燥(水滴1つ)を示し、どの郷土樹種をどのような場所へ植栽すべきか一目でわかるように、農民ファシリテーターらの知見を活用してマトリクスに落とし込む作業を行いました。今後、農民ファシリテーターらが村へ戻って農民グループとともにとこれを作成、実践していきます。
樹種の適性に合致した場所への山引き苗の植林と、植栽後の周辺雑草除去と保護目的のマーキング実習
FMC-FFSを受講した農民グループは、自ら多様な山引き苗の育成を開始しています。写真は、郷土樹種の一種である
Aningeria adolfi-friederici
(オロモ語名
Qararoo
)の山引き苗の植林実習の様子です。今後、農民グループは、育成した山引き苗を、森林内の樹種毎の適地への補植(Enrichment Plantation)を行い、森林の天然更新を促進させることで森林回復を目指します。
森林内に天然更新する若木の保護活動実習
写真左: 周辺雑草除去とマーキング前、写真右:周辺雑草除去とマーキング後
森林内に自然に芽生えた若木が見られる場所では、それらを保護することで、自然の再生力を助け、森林の回復につなげていきます。写真は郷土樹種の
Prunus africana
(オロモ語では
Omoo
)。木の棒などでマーキングして目立たせることで雑草とともに除去されるのを防ぎます。