プロジェクトニュース 第30号

私はコミュニティー開発隊員として農業支援の活動を行っており、主に小学校の農業クラブでの農業指導と農家グループへの有機農法の普及と収入向上の活動をしています。活動で、生徒たちとの市場調査と農家グループへの研修を計画していたことから、研修でどのように知識や経験を伝えるか、そして、市場調査をどのように行うかを学ぶため、SHEP Bizの研修に参加させて頂きました。

私が参加させて頂いた男女農家普及員集合研修(以下、SHEP研修)は、Nyamiraカウンティの行政官と農家が対象でした。研修は、「意欲」と「情熱」、そして「熱気」、に溢れていたと感じています。一人一人が目標を持ちながら参加して、新しいことを学び、知ろうとする「意欲」。学び、知ることができたものを自分自身が置かれている環境に置き換え、暮らしの改善につなげるためにどうするか考える「情熱」。そして、何よりも老若男女問わず、農家や普及員、研修の主催者の上下関係がなく、分け隔てなく意見を出し合い、より良い学びを共に創り上げていこうとする「熱気」。学ぶ楽しさや知ることの喜び、協同する重要性を改めて感じた長くて、濃い、5日間の研修でした。

SHEP Biz研修で特に大きな学びとなったのが、研修の進め方と市場調査の方法です。研修は発表者が一方的に話す、教えるということが一般的です。しかし、SHEP研修では、研修中によく発表者が口にしていた通り、「お互いが先生」で一方通行ではないということです。SHEP研修は、発表者・参加者双方に学びがあり、何回やってもまた違う学びがある、座学だけではなく、「座学を通した実践から学ぶ」ものでした。SHEP研修は「教える」のではなく、「共有する」場なのだと感じ、また、私も活動を通して学ぶことばかりだということに改めて気づかされました。

また、市場調査と聞くと価格調査のことだと思いがちですが、価格はもちろんのこと、農作物の原産地や大きさなどの品質、季節性、需要・供給の有無など時間をかけてマーケットの人たちに話を聞いていきます。その情報に基づいて、農家さんが住んでいる地域の環境や圃場面積、栽培経験などを踏まえ、グループで生産する作物を選定します。こうして農家が自分たちで話を聞き、話し合い、考えて決め、決めたことに責任を持つ。こうした協同する経験が大きな自信になり、さらに考えるきっかけになるのだと感じました。生徒たちと農業をしていると、自分たちが食べる農作物のことしか考えていません。もちろん、自分たちが食べるものを自分たちで育てられる知識は非常に重要です。しかし、生活するうえでお金は必ず必要になってきます。そこで、子どものころから市場調査を体験することで少しでも経済とのつながりを考えるきっかけとなればと思います。

アフリカの諺に「早く行きたければひとりで行け、遠くに行きたければみんなで行け」というものがあります。SHEP研修で農家たちが共に考える様子を見ながらその通りだと感じました。時には1人で突き進むことも必要で大切です。しかし、SHEP研修を通して、協同することの大切さを改めて感じました。学ぶ楽しさや知る喜び、継続していけるという覚悟もまた、みんながいるからなのかもしれません。

作物選定を行う参加者

作物選定を行う参加者

市場調査の結果を発表する参加者

市場調査の結果を発表する参加者