59.閉鎖循環式養殖システムとは?
ここで、本プロジェクトの社会実装モデルNo. 7、8、9で使われる「閉鎖循環式養殖システム(Closed Recirculating Aquaculture System)」について簡単に説明しておきたいと思います。「水産養殖(aquaculture)」とは、魚介類や海藻などの水棲生物を人工的に繁殖・飼育することで、昨今では、近畿大学が「完全養殖」に成功した「近大マグロ」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。海洋生物であるクロマグロなどの養殖には、稚魚が逃げ出さないよう、また、餌やりや出荷サイズに育った成魚を容易に捕獲できるよう、「生け簀」などを洋上に設置します。一方、淡水生物の場合は、陸上に水槽や池などを設置し、川などから水を取り入れ、使用後の汚水は、また川などに流してきました。しかし、近年では、この汚水による環境汚染などが問題になっています。そこで、「循環式」というシステムが開発されました。これは、使用する水を様々な水処理装置に文字通り「循環」させ、餌の残り物や糞などの沈殿物を取り除き、生物膜により水溶性有機物を回収するとともに、生物膜を構成する細菌などの働きによって魚介類の排泄するアンモニアなどの有害物質を無害化するなどして、繰り返し使いますので、飼育水の使用量を極力減らすことができます。そして、最低限の処理水の排水が必要な「循環式」を更に一歩進めたのが「閉鎖循環式」です。これは、飼育水をより高度に浄化することにより、給排水を行わず飼育水を完全循環利用する、環境汚染を与えない理想的な養殖システムです。最近では、宇宙ステーションや宇宙基地での利用を目的とした「閉鎖循環式」も開発されているといいますから、今後が楽しみですね。
閉鎖循環式養殖システムの模式図©Dr. Le Quoc Viet of CTU
CTU水産養殖学部の敷地に設置された、バナメイエビ用の閉鎖循環式養殖システム(中央の計6個の円形と四角形の水槽)