63.水産養殖プロジェクトの社会実装のために/東京海洋大学准教授・遠藤雅人
水産養殖全般における社会実装は、最終目標を、生産技術の移転や実践といった生産に注視した内容ではなく、水産物の販売・流通にすべきと考えます。生産方式や技術の展開は、あくまで中間目標であり、生産の目途が立った時点で、販売・流通、ビジネスモデルの検討・構築を並行して進めるのです。養殖業を産業として成り立たせるには、事業として成立させ、生産者や加工業者、販売者に相応の利益をもたらすことが必須です。また、水産加工・流通販売ビジネスを展開している日本企業などとの連携には、導入した生産技術により、将来的にどの程度の品質の、どのような特長を持った養殖生産物が、どのくらいの量、どの程度のコストで生産できるのか予測したうえで、加工、流通・販売を模索する必要があります。南部経済回廊の入り口(しかも東側)に位置するメコンデルタで養殖ビジネスを展開することは、他の産業同様、日本にとっても魅力的なものです。そして、だからこそ、同地域での水産養殖分野の生産から販売までの流通経路の確立にJICAが支援を行う意義があります。