事業所GHG算定報告システムとNDC進捗点検に関するコンサルテーション会合の開催
JICA気候変動協力事業SPI-NDCは、ベトナム天然資源環境省(MONRE)とともに、ベトナム政府が推進する事業所レベルのGHG算定報告システムと2030年GHG削減目標(国としての適切な貢献、「NDC」)の進捗管理の2テーマに関するコンサルテーション会合を以下のとおり開催しました。本会合では同テーマの活動進捗を議論するとともに、日本環境省の参加により、日本の類似する制度運用の経験を共有する良い機会となりました。
日時・場所
日時:2023年3月31日(金)
場所:Intercontinental Hotel Hanoi Landmark 72
参加者:194名(会場参加36名、オンライン参加157名)
プログラム
13:30 | 開催挨拶 | タン・テ・クオン ベトナム天然資源環境省 気候変動局局長 久保 良友 JICAべトナム事務所 次長 |
13:50 ~14:05 |
ベトナムにおける MRV概況 |
ダン・ホン・ハイン SPI-NDCナショナルエキスパート(VNEEC) |
14:05 ~14:30 |
日本の制度運用経験の共有(EEGS・NDC進捗点検) | 金沢 康太 環境省 地球環境局 地球温暖化対策課 脱炭素ビジネス室 主査 小福田 大輔 環境省 地球環境局 総務課 脱炭素社会移行推進室 室長補佐 辻 景太郎 環境省 地球環境局 国際脱炭素移行推進・環境インフラ担当参事官室 室長補佐 |
14:30 ~15:00 |
活動報告1) ベトナム事業所GHG報告システム構築の進捗・課題・提案 |
ホアン・ハイ SPI-NDCナショナルエキスパート(VETS) 藤瀬 航 短期専門家(報告システム) |
15:00 ~15:30 |
ディスカッション1) | モデレータ:グエン・トゥアン・クアン 天然資源環境省 気候変動局 局次長 福田 幸司 SPI-NDC総括/長期専門家 |
休憩 | ||
15:30 ~16:30 |
活動報告2)・3) NDC進捗指標 (廃棄物) NDC進捗指標 (セメント) |
タン・ティ・ホン・ロアン SPI-NDCナショナルエキスパート(EPRO) グエン・タイン・マイン SPI-NDCナショナルエキスパート(NIRAS) 玉井 暁大 短期専門家(透明性) |
16:30 ~16:50 |
ディスカッション | |
16:50 ~17:00 |
閉会 | 廣井 明 在ベトナム日本大使館 書記官 |
概要と主な論点
総論
- 参加者の透明性・MRVの概念について正しい理解を促すため、先ず国レベル・セクター・事業所レベルの異なる階層が存在すること、各々の政策目的・アプローチ(トップダウン・ボトムアップ)・方法論が異なることを示し、議論にはスコープ設定が重要である点が強調されました。
テーマ1):事業所GHG算定報告システム(事業所レベル)
- 日本の経験共有として、地球温暖化対策推進法(温対法)に基づく事業者GHG算定報告公表制度(SHK)の概要・運用実績と、現在進行形で進む同制度の電子化(省エネ法・温対法・フロン法電子報告システム(EEGS))の取組みが紹介され、特に以下の点がハイライトされました。
- 事業者が自ら自社の排出量・構成を理解し、対策展開を促すことが制度目的
- 省エネ法と表裏一体の運用とすることで報告者側の使いやすさが担保されている
- 事業者は義務としての自社排出量報告のほか、任意ベースで自社努力を記載する欄が設けられていること
- 所管官庁がサポート体制を充足させていること(マニュアル、研修、等)
- ベトナムでの事業所GHG報告に係るモックアップ設計の進捗報告として入口は完成し、各省通達が規定する方法論に基づく業種毎の算定シート策定と運用マニュアル策定の次ステップが示されました。併せて、今後ベトナムがオンライン報告制度を最終化させ、適切に運用していくために必要な事項(算定方法を定義した各省通達の早期発効、政府によるサーバ・システム運用チーム担保、報告受領主体・報告企業の能力強化、他)について確認がなされました。
テーマ2):NDC施策の進捗点検(国レベル)
- 日本側からは、NDC進捗管理ツールに該当する地球温暖化対策計画の毎年進捗点検の設計と取組みについて紹介がなされ、省庁横断性を担保するために内閣府下の地球温暖化対策推進本部が音頭を取っていること、100を超える施策群のほとんどはCO2換算可能な定量指標が設定され、毎年進捗が確認され、進捗点検結果が一般公開されていること、が示されました。
- SPI-NDC専門家チームより、対象とした廃棄物とセメントセクターのNDC施策群に対する進捗管理指標が発表されました。進捗点検に際しては、施策によってはレベル感が異なり更なる細分化の必要性があること、進捗に要する活動データ・統計の補足可能性などが確認されました。
全体議論では、テーマ1)に関しては、セクター官庁側の準備状況や課題の共有、システム運用に係る要件の確認が省庁間で話し合われたほか、報告に要するインプットデータの品質・明確性が指摘されました。またテーマ2)に関しては、進捗指標を整理する際は、NDCに係る国際報告要件(BTR等)にも利用できるよう設計を考慮すべきとする意見が示されました。また指標については国内のNDC策定チームともセクター別に協議して纏めることが推奨されました。
コンサルテーション会合の様子