スリランカにて品質管理者向け5Sカイゼン研修を実施
2024年8月18日から30日まで野口記念医学研究所(NMIMR)において5S-KAIZEN-TQM活動に関わる品質管理者7名が、スリランカを訪問し、5Sカイゼンの実施状況を視察しました。今回の研修目的は以下の通りです。
- 1 . NMIMR における品質マネジメントの実施に関する現状と課題を認識し、分析する。
- 2 . NMIMR とスリランカの教育機関との TQM における管理システムと職員の関与の違いを比較し、理解する。
- 3 . TQM活動を成功に導き、維持するための知識とスキルを習得する。
- 4 . NMIMRにおける5S-KAIZEN-TQMを改善するため、本研修で得た知識を基に行動計画を策定し、NMIMRと共有する。
野口研では2023年4月と2024年1月に、5Sカイゼンの日本人専門家による5Sカイゼンリーダー研修を実施し、これまで職場環境の改善とそれによる研究の質の向上を目指してきました。研究室や執務室において、整理、整頓、清掃の活動が定期的に行われるようになり、書庫の改善や冷凍冷蔵室の整理整頓などが実施されてきました。一方で、整理、整頓、清掃のレベルは向上したものの、継続的なカイゼン活動に結び付けていくことが課題となっています。そこで、日本で長く5S-KAIZEN-TQMについて指導してきた半田先生と、スリランカの保健医療現場にて同活動をリードしてきたカランダゴダ先生のご協力のもと、スリランカにて5Sカイゼン研修の実現に至りました。
研修に先駆け、所内の5S活動の現状と問題点をレビューするため、7月末に全所にて5S活動モニタリング評価が実施されました。ここでは、2024年1月に日本人専門家により実施された初回モニタリング評価に同行した野口研の品質管理室職員が中心となって、各部門の研究室を回り、チェックリストを用いて採点が行われました。この結果をもとに、研修参加者は事前に「各部門おいて何を改善しなければならないか」を抽出し、自分たちがスリランカで何を学び、帰国後何を実現したいかを明確にし、各自が研修の目標設定を行いました。
研修は保健省への表敬訪問を皮切りに開始されました。
スリランカ保健省へ表敬訪問
視察先のランカ病院、キャッスルストリート婦人科病院では、院内の安全と業務の効率を徹底した5Sカイゼン活動の実践を見学し、その取り組みの内容、成功事例などを学びました。院内には、5S取り組みを広報する張り紙、注意喚起のポスターなどが掲示され、職員の安全に配慮した職場環境が整えられていました。特に印象的だったのは、在籍する職員が自分たちの取組や、それによる効果を自信をもって説明できていたことです。カイゼン活動が職場の日常の活動の一つとして根付いていることがうかがえました。参加者から、「これならうちにも導入できるかも」「これは費用が掛からないのですぐに実践できる」といった声が聞こえてきました。こういった気付きこそが、開発途上にある国同士の学び合いの成果として目指していたものです。先進国の最新の病院や施設ではすべてがオートメーション化されていたり、コンピュータ化されていますが、途上国では停電が多く、予算に制限があり、古い建物や機材を使用しているといった環境の違いから、先進国と同様の対応は実現不可能なことも多く、カイゼン活動を行えない理由が「予算がないため」という結論になってしまいがちです。似た環境の国で取組可能なことを見つけたことにより活動への意欲が高まり、各施設で得たアイデアが彼らのアクションプランの中にも盛り込まれました。
ランカ病院にて
ランカ病院にて
キャッスルストリート婦人科病院にて
キャッスルストリート婦人科病院にて
上述の2か所の病院の他、スリランカ国立医学研究所、国立ペラデニヤ大学歯学部へも訪問しました。スリランカ国立医学研究所は、野口研と同じく国を代表する研究教育施設で、1900年設立のソイサ細菌研究所が発端で、戦後1946年に現在の国立医学研究所となった歴史を有する由緒ある研究所です。ここでは双方の研究室からそれぞれ2名の代表研究者が研究発表を行い、意見交換が行われました。その後研究室をいくつか訪問見学した中で、国際標準のISO認証を取得している研究室も訪れ、これから国際認証取得を目指している野口研スタッフも大いに刺激を受けました。
ペラデニヤ大学歯学部は、25年前に日本の援助で設立された建物と、その時に寄贈された歯科用機材を見ることができ、25年間手入れされ、今も良好な状態で使用されている機材に一同感嘆し、いかに日々の日常点検が重要かを学びました。
スリランカ国立医学研究所にて
ペラデニヤ大学歯学部にて
スリランカで数々の学びを得た参加者は、帰国後はそれぞれ作成したアクションプランを元に、活動計画を実践していく予定です。本プロジェクトは2025年7月に終了予定であるため、今後のカイゼン活動の活性化のため引き続き野口研における活動を支援していきます。
参加者による研修成果及びアクションプランの発表
修了証を授与