プロジェクトニュース第7号(West New Britain 州での林業事業体研修について)
研修概要
本プロジェクトでは、2023年9月から2024年3月、伐採事業の実施に関する規則・規範であるPMCP ※1 とLCoP ※2 に関する研修を、パプアニューギニア森林公社(PNGFA)の担当職員に対して、3箇所において実施しました。この研修資料等を活用し、2024年9月から11月にかけて、3回のPMCP・LCoP研修を、林業事業体に対しても実施していくこととしています。
9月23日から9月28日の6日間、第1回林業事業体向けのPMCP・LCoP研修を、West New Britain 州において開催し、同州の5つの林業事業体から12名の研修生が参加しました。なお、本研修は、EU-FCCB Project※3の実施機関の一つであるExpertise France(EF)からの資金支援を受けて実施しました。
開会
開会では、PNGFAのChief Operating Officer(COO)のMagdalene Maihua氏が、開会挨拶と2020年に改訂されたLCoPに関する基調講演を行いました。その中で、Maihua氏は、「改訂されたLCoPは、熱帯林の伐採において環境負荷の低減を目指すものである」と述べ、その実践の重要性を強調しました。続いて、本プロジェクトのチーフアドバイザーの岡林氏が、本研修の目的について、「林業事業体のPMCPと改訂LCoPの理解と遵守を高め、伐採事業において土壌、水資源、生物多様性等への影響を低減し、森林資源の利用と保全のバランスを取りながら、持続可能な森林経営の達成に貢献すること」と説明しました。
Magdalene Maihua氏(COO)による開会挨拶
岡林氏(チーフアドバイザー)
1~2日目:PMCP、LCoP研修
研修講師であるGeno Kini氏とSimon Peter氏が、LCoPとPMCPの講義を行いました。LCoP講義では、遵守すべき事項や基準について、伐倒作業や道路開設時の実例も交えながら説明を行いました。その後、LCoP理解度の確認試験を行い、その基準や実務的応用について、講師と研修生が一緒に答え合わせをすることで、理解を深めました。PMCP講義では、事業体が行うべき事業実施手順の解説に加え、事業体がPMCPに基づき作成する事業計画図の作成演習を、先ず紙図面を使い行いました。なお、5日目の現地研修では、演習事業区の現地踏査を行うこととしています。
Geno Kini氏(研修講師)によるLCoP講義
Simon Peter氏(研修講師)によるPMCP講義
講義を聞く研修生
3~4日目:GIS、GPS研修
JICA峯岸短期専門家とPNGFAマッピング課Jehu Antiko氏を中心として、GIS(地理情報システム)とGPS(全地球測位システム)に関する講義と演習を行いました。研修生は、GISとGPSの基本知識、GISソフトのQGISの使用方法を学んだ後、QGISを使用して事業計画図の作成演習を行いました。この演習では、PNG国内で利用されている40m間隔の等高線ではなく、5m及び10m間隔の等高線の事業区域図を準備しました。研修生からは、より詳細な等高線を使うことにより、LCoPの基準により合致した事業計画図が作成できるとの声が聞かれました。また、GPSアプリのQFieldの基本操作と使用演習も行いました。
図面作成実践①(事業計画区域等の説明)
図面作成実践②(GISを使った事業計画図作成)
左:GPSアプリの基本操作演習
右:GPSアプリの野外操作演習
5日目:現地研修
Stetting Bay Lumber 社の伐採事業現場において、現地研修を行いました。参加者は、道路、伐採木、土場、スキッドトラック等の事業箇所を移動しながら、LCoPの遵守事項や基準の確認を行いました。また、バッファーゾーン、水源地、取水地、鳥類の営巣木などについて現地で検討をおこない、伐採事業における環境負荷の低減について理解を深めました。更に、QFieldの現地演習を行い、事業区境界や、道路、スキッドトラックなどの位置情報を記録しました。
左:現地研修①(森林資源の利用)
右:現地研修②(バッファーゾーンの設定)
左:現地研修③(LCoPの確認)
右:現地研修④(伐倒方向の確認)
6日目:グループ発表
研修生は、QFieldで収集した位置情報をQGISに取り込むとともに、現地確認した森林の状況、研修で学んだLCoPの基準や遵守事項も踏まえて、事業計画図を完成しました。
その後、各グループは、それぞれの事業計画図の発表を行いました。発表後、各グループの発表内容について、講師、研修生、森林公社、JICA専門家で意見交換を行いました。各グループが作成した事業計画図を基に、等高線に沿った道路設計、急傾斜地の取扱い、水源地の保全、バッファーゾーン設定や営巣木保護などについて検討を行い、伐採事業とその環境負荷低減についての有益な意見交換となりました。
左:グループ発表①
右:グループ発表②
グループ発表③
閉会
閉講式では、PNGFA、JICA、EF、林業事業体の代表者が、閉会挨拶を行いました。林業事業体を代表して挨拶した Moris Boja 氏 (Stetting Bay Lumber社) からは、「本研修に参加し、研修講義、現地研修、グループ討議を通じて、講師や参加者から多くを学んだ。この研修の企画・運営に携わったPNGFA、JICA、EFの関係者に感謝する。」と謝辞が述べられました。
最後は、PNGFAのJohn Orabi 氏 (Project Manager)、JICAの岡林氏、EFのMr. Sam Moko氏の3氏より、12名の研修生に対して修了証が授与され、6日間の研修を終了しました。
修了証の授与①
修了証の授与②
修了証の授与③
閉会式(修了証を持つ研修生、主催者及び講師)
研修評価
研修生に実施したアンケートでは、PMCP、LCoP、QField、GIS、現場実践等の主要な研修内容について理解度が向上したという結果が得られました。また、研修生からの評価は、「研修の内容は理論と実践がバランスよく準備され効果的であった」、「実践的で実務に役立ち有益であった」、「同様の研修をまた実施して欲しい」など肯定的なものがほとんどでした。改善事項としては、「研修期間は6日間では短く、期間を延長してより深い内容を学びたい」という意見がありましたが、この点は、予算や研修生の参加率に影響するため慎重に検討する必要があると考えています。
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1
“Planning, monitoring and control procedures for natural logging operations under timber permit”:「木材許可に基づく天然林伐採の計画、モニタリング、管理手順」
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2
”Logging Code of Practice”:「伐採規範」
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3
”EU-FCCB Project”:「EU-Forestry, Climate Change and Biodiversity Project」