「栽培技術指導工程」を用いた野菜栽培の技術指導を実施しています(2024年7月31日)
作物栽培では様々な問題によって作物の品質や収量が低下することがあります。しかし、農家にとって、問題を特定し解決法を決定することは必ずしも容易ではありません。問題の本質を見誤ったり、問題の優先順位付けを誤ったりすることがあります。プロジェクトでは、対象農協が農業普及員と協力して栽培関連の問題を自ら特定し、適切な技術を適用することを目的として、「栽培技術指導工程」(図1)を用いた野菜栽培の技術指導を実施しています。
図1:栽培技術指導工程
第1段階では、生産者が参加型による問題特定と解決法を考えます。具体的には、市場調査の際のバイヤーからのコメントや過去の栽培経験を基に、生産者が野菜栽培時の問題を協議します。続いて生産者は、農業普及員と相談しながら、問題の優先順位付けを行い、解決策を決定します。過去のプロジェクトでは、対象地域の野菜栽培の主要な問題は4つであったことから、専門家チームは主要な問題とその解決法を整理した下表を農業普及員に提供し、生産者との問題特定に活用してもらっています。
主要な問題 | 解決法 |
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土壌に関連する問題:堆肥不使用、家畜糞散布などにより、地力低下が起きている | 現地の材料を用いた好気的堆肥製造法 |
土壌に起因する病虫害に関連する問題:集約的栽培などにより土壌に由来する病害虫が蔓延している | 太陽熱土壌消毒法 |
苗に関する問題:不健全な苗や生長の不均一な苗を使うことによって作物の健全な生育や着果が阻害されている | セルトレイを用いた育苗法 |
品種に関する問題:高温耐性、病害抵抗性品種など新品種に関する最新情報やアクセスが不足している | 新品種導入 |
第2段階では、農業普及員の指導の下、生産者が解決法に関する情報の取得やトレーニングを行います。具体的にはその技術を導入している農協を訪問し、実際の技術手法を見学します。普及員や講師による座学ではなく現場で生産者から学ぶため、その後の生産者同士の交流にも繋がるよい機会となっています。
第3段階では、生産者が第2段階で学んだ手法を自ら実践/実証します。農業普及員が実地で丁寧な説明と指導を繰り返すことで、生産者による新しい技術の習得につなげています。
プロジェクトの対象省では、PPMU(Provincial Project Management Unit)の積極的な活動が生産者の栽培技術向上に繋がっており、好評を得ています。今後も3段階による「栽培技術指導工程」を繰り返すことで、農業普及員が生産者へ効率的かつ効果的に栽培指導を継続していくことが期待されます。
農協メンバーは市場調査を行い消費者需要や嗜好を把握。現在の野菜栽培状況を踏まえて課題の抽出とその解決策を決定する(第1段階)。
先進農協(ハイズオン省Tan Minh Duc農協)による「地元材料を用いた好気的堆肥製造法」を見学し、参加者はその手法を学んだ(第2段階)。
「セルトレイを用いた育苗法」を見学した(第2段階)後、自らの圃場(ソンラ省Nong Xanh 農協)でその技術を実践した(第3段階)。