台風11号(アジア名:ヤギ)による被災後の生産栽培活動再開のための復旧手法研修を実施しました(2024年10月1日)
9月7日にベトナム北部を直撃した過去30年間で最も強い台風11号は、広範囲にわたり洪水や地滑りなどの甚大な被害をもたらしました。 PPMU(Provincial Project Management Unit)の報告によると、プロジェクトの38対象農協に台風被害の影響がでており、農作物被害 (36 農協、92%)、構造物の倒壊 (17農協、44%)、建物の浸水 (3農協、 8%)、農業機械と資材の損失(3 農協、8%)といった被害がありました。また、被害総面積は480ヘクタール、推定被害額は約1千億ドン(5億7500万円)と見積もられています。
台風11号による被害から生産活動の回復・再開を支援するため、NAEC(National Agriculture Extension Center, 国家農業普及センター)はJICAプロジェクトと連携し、2024年10月1日から3日間に亘りハイズオン省とナムディン省において、圃場処理と生産回復に関する研修を開催しました。
研修の主な目的は、災害後の青果物の復旧方法に関する実践的な知識と技術を習得すること、および災害後の青果物に対する市場情報や消費需要動向を共有することです。研修には、プロジェクト対象地域の野菜・果物農協の代表者や省農業普及センターの職員ら約60名が参加しました。
研修では、「災害後の果樹園の復旧方法」と「新たな作物栽培に備えるための浸水被害を受けた圃場整備」の 2 つの分野に焦点を当てました。研修で紹介された技術の一例として、果樹栽培における根や枝の修復技術、野菜栽培におけるpH(酸度)調整、育苗方法やコンポストの施用などが紹介されました。参加者は理論的に手法を学んだ後、圃場で技術を実践しました。また、被害を最小限に抑えるための効果的な対策を行っている農場を視察することにより近隣農家の好事例を学ぶ機会となりました。
研修では、専門家から知識を学ぶことに加えて、参加した生産者や農業普及員から自然災害後の復興を進める上で得た教訓等が共有され、今後の台風等の災害に備える際の対応策も提案されました。今後、同様に強風の大型台風が発生した場合、ビニールハウスの骨組みを守るため、嵐が接近する前に覆っているビニールシートを予め外しておく必要がある事などの意見も交わされました。
多くの対象農協は今回の被害により当初の栽培計画の変更を余儀なくされております。次の栽培時期(冬作)に向けた栽培計画の見直しの参考となるように、災害直後の野菜・果物のバイヤーへの簡単な聞き取り調査結果や市場の需要動向等についてもプロジェクトから共有しました。
参加した農協の代表者からは、講義内容は現在の被害状況で対処すべき重要なポイントに焦点を絞ったもので大いに参考になった、すぐに適用したいとの前向きなコメントが多く寄せられました。研修参加者が研修で得た知識や技術が広く共有・実践されるようプロジェクトチームはPPMU職員とともに、現場活動をフォローし、生産活動の速やかな回復・再開を支援していきます。
災害後の青果物の復旧方法に関する実践的な知識と技術に関する講義が行われた。
台風災害後、青果物の需要情報を共有。参加者間で意見交換を行った。
倒壊し再建不可能となったビニールハウスを視察する様子。
参加者は暴風雨や洪水に対応し最小限に被害を抑える技術を学んだ。
果樹の修復方法に関する現地指導。
洪水被害後の圃場整備に関する現地指導。