対象農家の新品種ライチの収穫が始まりました(2025年5月24日)
プロジェクト対象農協であるハナム省のNguyen Uy農協では、例年より7~10日早く新品種のライチ収穫を開始しました。(従来品種のライチ収穫時期は5月末~7月前半頃)
Nguyen Uy農協は、プロジェクト活動の一環としてライチの需要に関する市場調査を行った結果、大玉かつ早生の品種である通称“エッグシェイプライチ”(フンエン省原産で卵のような形のライチ種)と呼ばれる品種の需要が高いことを把握しました。2023年5月、JICA専門家とハナム省PPMU(Provincial Project Management Unit)は、Nguyen Uy農協のライチ農家20世帯を対象に、「新品種ライチの接ぎ木技術に関する研修」を実施しました。
接ぎ木技術を適用することで以下の利点が期待されます。
- 早期結実:従来品種の台木を伐採することなく活用し、既存の枝に新品種を接ぎ木することで早期に収穫が可能となる。(苗木栽培は収穫までに約4年を要するが、接ぎ木から収穫までは1〜2年)
- 樹勢管理:矮性台木(地上部の樹勢を矮小にする台木)を使用することで樹高を低く抑え、剪定や収穫作業が効率化する。
- 特定品種の増殖:品質(色や香味)や生産性(収量や栽培期間)に優れた品種を短期間に栽培普及させる。
新品種の接ぎ木技術を適用した73本のライチの樹は、JICA専門家による技術指導とモニタリングにより適切に病害虫管理が行われ、順調に生育し17か月後には開花が確認されました。2025年5月、Nguyen Uy農協の圃場では、従来品種より1.5~2倍大きいサイズとなる4.5~5㎝程度の新品種ライチの収穫が行われました。従来品種では1~2日で変色が進みますが、新品種は収穫後、常温で4~5日間は薄ピンク色を保ち、程よい甘酸っぱさのバランスが保たれています。さらに、市場にライチが出回る時期より出荷が早いこともあり3~4倍の高値で取引されています。
とりわけ、昨年は天候不良や台風被害による影響でライチの収量が下がり、多くのライチ農家の収入は大打撃を受けました。次年度以降の生産普及拡大に向けて、PPMUはNguyen Uy農協をライチ栽培技術の実証モデルとして周辺農家へ拡大するプログラムを計画しています。
新品種ライチの接ぎ木箇所(2024年4月)
新品種ライチの花(2025年2月)
接ぎ木されたライチは高い着果率であることを確認した(2025年4月)
JICA専門家による技術指導の様子
従来品種のライチ(収穫期前)
新品種“エッグシェイプライチ”
収穫したライチを計量
市場に出荷前のライチ