日本人専門家の第二回渡航がスタートし、現場訪問が始まりました
2023年8月17日より、日本人専門家が第二回目の現地調査を開始しました。第一回の渡航で得られた貴重な知見、そしてパレスチナ側関係者の熱意や期待に応える形で、この度の調査が実施されます。目的は、疾病診断のさらに技術的な観点からの情報収集と、今後の技術移転のための強固な基盤作りです。
今回新たに、CVL(Central veterinary Laboratory:中央獣医ラボ)に新設予定の病理検査部門を担当する、獣医病理学の専門家、また、動物感染症診断や卒後教育研修のカリキュラム構築を担当する専門家の2名が渡航しています。CVLを含むパレスチナ西岸地区の3ヶ所のラボを訪れ、現地の検査状況を詳細に把握します。技術移転やラボの機能強化のための重要な情報を収集し、これらを基に今後の活動方針を練っていく予定です。
さらに、現地獣医事務所の業務や農家の状況について理解を深めるため、専門家チームはフィールド訪問も計画しています。ワクチン接種の具体的な実施状況や現場でのサンプリング方法、現地の課題などを詳しく確認する予定です。
*獣医病理学とは、肉眼での観察や細胞の状態を顕微鏡で確認し、動物の病状を正確に診断する学問分野です。この病理学の知識は、疾病の早期発見や正確な治療法の選定に欠かせないものとなっています。
**動物感染症診断の専門家からは以下のような抱負が述べられました。
およそ1万年前に人類がはじめて羊や山羊の家畜化を始めた肥沃な三日月地帯の一角でもあったパレスチナ、この美しく歴史ある大地で家畜の感染症対策を検討しています。日本ではすでに根絶されて見ることのない病原体の診断法整備、イスラエルとの複雑な関係ゆえに、実施困難ながらも感染症制御に不可欠な家畜の移動対策など、貴重かつチャレンジングな経験をさせていただいています。現地の方々に寄り添いながら、できる限りのことをするために最善を尽くしたいと思っています。
今回の専門家チームの活動は、今後のプロジェクトの進展に大きく貢献することが期待されています。
ラボで病理担当予定の獣医師へ病理診断の説明をする専門家
ラボの職員と検査・診断方法のディスカッションをする専門家