ザンビア・ルサカ州におけるコウモリ検体採取(マールブルグウイルス等の疫学調査)

2021年12月15日

ザンビアのルサカ州Chongwe郡には数万頭のコウモリが生息する洞窟があり、地元の人々はバット・グアノ(堆積したコウモリの糞)を肥料として活用しています。本プロジェクト(先行プロジェクト含む)では、2014年よりこの洞窟のコウモリを調査しており、ヒトを含む霊長類に致死的な出血熱を引き起こすマールブルグウイルスの存在を明らかにするなどの成果をあげています。ウイルスとコウモリを対象に疫学・生態学的な調査を継続する必要がありますが、2020年以降はCOVID-19の影響で調査を休止していました。

2021年11月30日、ようやくザンビア大学獣医学部および観光・芸術省国立公園・野生動物局(DNPW)によるCOVID-19発生以降初となるサンプリング(検体採取)が行われました。コウモリは法律で保護された野生動物であるため、サンプリングにはDNPWの許可と職員同行が必要となります。さらに、サンプリングは人里離れた場所で行われるため、様々な野生動物に出くわす危険がありますが、DNPW職員はそのような危険から研究者を守る役割も果たしています。今やザンビアの人々だけでサンプリングを実施できるようになったことは、先行プロジェクトの時から日本人専門家が長年行ってきた技術指導の成果と言えるでしょう。

現場に到着し、最初に行うのはコウモリの捕獲に使用するハープ・トラップ(写真)の組み立てです。トラップは、洞窟入り口に設置します。日没後、餌を求めて洞窟から出てくるコウモリをこのトラップで捕らえるのです。コウモリを扱う際は、感染に備え、写真のような個人用防護具(PPE)を正しく装着する必要があります。

トラップに十分な数のコウモリがかかったら、コウモリを袋に入れ重さを量り、コウモリの直腸と口腔から糞や粘液を採取します。同時に、そのコウモリが花蜜や果実を主食とするオオコウモリなのか昆虫食コウモリなのか特定し、性別も確認します。そしてこれらすべての情報を記録したあと、コウモリを自然にかえします。

活動を終了したのは22時過ぎ。長い一日となりましたが、50匹もの昆虫食コウモリから検体を採取でき、大収穫の出張となりました。今後も本プロジェクトでは、アフリカのコウモリが保有するウイルスについて研究を継続していきます。

報告:ザンビア大学獣医学部研究員 Dr. Katendi Changula
訳・一部追記:日本人専門家チーム

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ハープ・トラップの組み立て

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ハープ・トラップを洞窟入り口に設置

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個人用防護具(PPE)の装着

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コウモリの情報を記録。青い布袋の中にコウモリが入っている。

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口腔からの検体採取

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博士課程の学生が初めてのコウモリからの検体採取に挑戦!