ザンビア・ルサカ州におけるコウモリ検体採取・生態調査

2022年6月2日

フィロウイルス(エボラウイルスおよびマールブルグウイルス)はヒトを含む霊長類に重篤な出血熱を起こします。我々のプロジェクトでは、ザンビアのルサカ州Chongwe郡の洞窟に生息するエジプトルーセットオオコウモリから、マールブルグウイルスなどの人獣共通感染症を引き起こす病原体を検出することに成功しています。一方で、自然界におけるこれらのウイルスの存続様式は未だ謎に包まれています。ウイルスの伝播は宿主の生態に大きく依存するのですが、アフリカ大陸におけるコウモリの生態はほとんどわかっていません。

ウイルスの生態の解明を目的として、今年4月、プロジェクトでは専門家チームを数回にわたり上記洞窟に派遣しました。微生物学を専門とする北海道大学の専門家、ザンビア大学獣医学部の研究者に加え、コウモリの生態調査を専門とする同志社大学の研究者も強力な助っ人として来訪し、チームに加わってくれました。さらに、本プロジェクトのもう一つのサイトであるコンゴ民主共和国からも、コウモリの調査手法を学ぶために専門家が合流しました。これからコンゴ民でもコウモリの調査を展開することが期待されています。

今回のフィールド調査では、エジプトルーセットオオコウモリにデータロガーを装着し、GPS位置情報からその移動を追跡することでコウモリの生態をより詳細に理解することを試みました。また、洞窟から飛び去るコウモリの様子を赤外線カメラで撮影することで、コウモリのポピュレーションサイズの概算も行います。さらに、コウモリの口腔および直腸から検体を採取し、ウイルスの検出も試みます。

先行プロジェクトの時からコウモリの調査を長年続けている専門家やカウンターパートは、慣れた手つきでトラップを設置し、コウモリを捕まえ、検体を採取していきます。今回初の試みとなったデータロガーの装着も無事に行うことができ、これまで知られていなかったコウモリの移動の軌跡が続々と明らかになってきています。コウモリがどのようなウイルスを保有しているのか、そのウイルスがいかにして広がっていくのか、これからも当プロジェクトでは分析を続けていきます。

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特別な防護服を身に着け、洞窟に入ります。

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ハープトラップと呼ばれる罠をしかけ、コウモリ捕獲の準備をします。

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ザンビアの美しい夕焼けの中、コウモリの飛来を待ちます。

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トラップが続々とコウモリを捕えます。

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コウモリの口腔から検体を採取し、ウイルスの検出を試みます。

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エジプトルーセットオオコウモリにデータロガーを背負わせ、自然に返します。