コンゴ民主共和国でのサル痘調査

2022年6月6日

コンゴ民主共和国(以下、「コンゴ民」)保健省は、2021年12月にマニエマ州キボンボ地区のツンダ保健ゾーンでのサル痘発生を宣言しています。サル痘とは人獣共通感染症で、天然痘同様の症状を伴う急性発疹性疾患です。1970年頃からコンゴ民を含めアフリカの一部の国で持続的に発生している風土病ですが、最近はアフリカ以外の地域でも感染者が報告されています。ヒトへのウイルス伝播を媒介する自然宿主はまだ特定されていませんが、げっ歯類が疑われています。コンゴ民では2021年12月から2022年5月までに、1,238例の陽性、57例の死亡が確認されました(出典:外務省海外安全ホームページ)。地方の医療従事者ですらサル痘の存在を知らないため、多くの感染者が最低限の処置を受けられずに亡くなっています。

ザンビア共和国とコンゴ民主共和国で実施中の「アフリカにおけるウイルス性人獣共通感染症の疫学に関する研究プロジェクト」では、ウイルスの自然宿主やヒトへの伝播経路解明のために、感染症の発生地域で家畜・家禽や野生動物、節足動物等の検体を採取しウイルスを検出する活動を行っています。北海道大学人獣共通感染症国際共同研究所の支援で、2022年2月11日~22日に中央獣医学研究所(LABOVET)がサル痘患者の居住地周辺の動物から検体採取を行いました。

上記の時期、サル痘患者の主要な発生地であるキボンボ地区ツンダ保健ゾーンまでの道路状況が悪く、車両ではたどり着けませんでした。そのため、キボンボ地区同様にサル痘症例が報告されているキンドゥ市周辺村落での調査となりましたが、大きな影響はなく、野生動物、家禽および反芻動物から検体を採取しました。現在、キンシャサのLABOVETで北海道大学が提供したPCR試薬を使って検体の解析を始めるところです。また、キンシャサから車で8時間程度のクウィル州マシ・マニンバ地区でも、25年ぶりのサル痘患者の発生が報告され、LABOVETと国立生物医学研究所(INRB)が調査を開始しています。ヒトの診断用検体のみではなく、げっ歯類、霊長類、爬虫類、鳥類および豚からも検体を採取し、現在LABOVETとINRBの研究室でウイルスの有無を解析するための準備を進めています

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Service National d'Épidémiosurveillance提供

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