33.ほど良い変異の作り方(重イオンビーム照射株を使った育種研究)

2016年8月6日

突然変異が発見されたのが1901年、X線と変異の関係が分ったのが1927年。ということは、広島と長崎に落ちたのが原子爆弾と分った時点で、科学者たちは「突然変異」の可能性を認識していました。被爆直後の長崎に真っ先に向かったのは、九州大学の育種チームでした。彼らは、崩壊した浦上天主堂近くの田で放射線を浴びたイネを採取し、変異を確認しました。これが、今なお植え継がれる「原爆イネ」です。ところで、「放射線」と言えば、X線とかガンマ線を思い浮かべますが、原子から電子をはぎ取ったイオンと呼ばれる放射線物質の中で、ヘリウムより重いものを「重粒子」または「重イオン」といい、これも変異を起こします。で、重イオンは、DNAの損傷を抑え、「ほど良く変異を起こせる」という利点があります。理化学研究所は、この重イオンビームを発生させる「リングサイクロトロン」という世界でも例のない装置を持っており、既にこの重イオンビームを照射したキャッサバ株をベトナムに導入しています。本プロジェクトでは、これらの材料を使った育種研究も行います。

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爆心地から5百mの浦上天主堂前©林重雄

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今なお植え継がれる原爆稲©しいのみ学園

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理研が世界に誇るリングサイクロトロン©理研