111.行幸の春にサクラ咲く(東京大学難波成任教授、日本学士院賞受賞)

2017年3月13日

東大の難波先生が「日本学士院賞」を受賞されることになりました。これは、明治43年(1910年)創設の、ノーベル賞受賞者が多数名を連ねる、日本の学術賞の中で最も権威ある賞です。先生の受賞理由は、農作物に多大な被害を及ぼす植物病原性細菌「ファイトプラズマ」の正体を分子生物学的に解明し、それが引き起こす病気の全容をも明らかにしたことにありますが、ただそれだけではありません。というのも、先生は、他の細菌に比べ、特に見つけにくいこの細菌を、実験室ではなく、農家の軒先で、しかも種類にかかわらず一網打尽にできる、超高感度で迅速・簡易な診断キットをも開発したからです。この「農家の軒先で」あるいは「どんな温度条件でも」という所に、難波先生の人生の流儀が凝縮されています。途上国の過酷な現場でも真に役に立つものでなければ意味がないからです。先生の授賞式は6月12日、天皇皇后両陛下のご行幸啓を賜り行われます。

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難波成任先生

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てんぐ巣病の症状が現れたナツメ。枝がほうき状に細かく枝分かれして鳥の巣のようになり枯れてしまう(©難波先生)

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ファイトプラズマに感染したアジサイの花の葉化症状(右)。左は正常な花(©難波先生)

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セミの仲間の小さな昆虫ヨコバイがファイトプラズマを媒介する(©難波先生)