248.沖縄諸島の本土復帰秘話(ベトナム・ノンラム大学で天敵寄生蜂の飼育つづく)

2017年11月29日

No.247でご紹介したような「生物農薬」は、ある地域の種の絶滅をも引き起こす力を持ちます。そしてその絶滅は、実は戦後の日本、返還されたばかりの奄美・沖縄で起きたことがあります。同地には、ミカンやウリなどの害虫となるミバエが生息していましたが、これを放射線で不妊化させ、自然に放し、野生種と交尾させる例の方法で、同地のミバエの数は幾何級数的に減り根絶に至ったのです(とはいえ一筋縄にはいかず、総額200億円と21年もの歳月がかかったとか)。でも、ジカ熱のような感染症を媒介するわけでもないミバエを、なぜそこまでして根絶しなければならなかったのでしょう?実はそこには、返還を果たしたのも束の間、本土からさまざまな意味で隔絶された沖縄を巡る事情がありました。日本政府は、本土にはいないミバエの侵入を防ぐため、沖縄から本土への農産物出荷を許可する条件として、復帰特別事業補助金により、ミバエの根絶を敢行したのです。一方、本プロジェクトでは、そうした根絶は視野に入れず、あくまで個体数を調節すべく、天敵(寄生昆虫ならびに捕食昆虫)の飼育をつづけています。

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ハダニの天敵の小型テントウムシ

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天敵を増やすための害虫飼育の準備

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天敵を増やすための害虫飼育の準備

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天敵を増やすための害虫飼育の準備