「対象者を中心に据えたカウンセリング」と「家族で行う生活習慣病の自己管理」を推進するためのプログラム開発

2017年1月27日

本事業では、地域住民を対象とした生活習慣病予防を推進するため、生活習慣病予備群に対する健診後のカウンセリング・プログラムと、家族を対象としたヘルス・プロモーション・プログラムを開発し、2016年10月から約3か月間、中部地域のバウレブ地区とナフィールド地区の一部で試験的に実施しました。同地区は、2016年を通じて本事業の初期調査が実施された地域であり、これらのプログラムの開発は、調査の分析結果や現場の医療従事者の経験や意見をもとに実施されています。
カウンセリング・プログラムは、これまでにもフィジーに存在しましたが、現状は、単一的な情報提供にとどまり、結果として対象者の行動変容に繋がらないといった課題がありました。新しいプログラムでは、食事や運動習慣に関する行動変容の目標を対象者自らに設定してもらい、その目標達成のために必要となる知識を提供しています。現場ではこのプログラムは「Client Centered Counselling(対象者を中心に据えたカウンセリング)」と呼ばれ、対象者と地域保健看護師が対象者の変化を一つずつ確認しながらカウンセリングを進めていく内容になっています。
ヘルス・プロモーション・プログラムは、「Family Cares(「家族で行う自己管理」の造語)」と名付けられ、広く一般家庭に巻尺を配布することで、腹囲の計測を促し、自分の体型の変化と、食事や運動との関連に目を向けてもらうこと、それによって自己健康管理への意識を高めてもらうことを目指しています。多くの家庭やスポーツジム、銭湯などの施設に体重計等がある日本とは違い、フィジーでは自分の体型の変化を客観的に知る機会が少ないことにも着目しました。BMI(ボディマス指数:体重と身長の関係から肥満度を示す体格指数)が測定できない環境も考慮し、肥満度を示す推計値として、腹囲の絶対値、並びに腹囲と身長の比率の推移を見ることを推奨し、フィジーでも安価で入手可能な巻尺で行える自己健康管理プログラムとなっています。
Family Caresの参加者のうち、産後も体形が戻らず参加したという20才代の女性は、プログラムの3ヶ月間で94cmから80cmと腹囲減少が見られ、「腹囲の計測と記録を続けながら、食事量を意識して減らすようになりました。」と、今後も継続する意欲を見せてくれています。
試行期間中は、1か月ごとにパイロット地区の地域保健看護師と活動の報告書をもとに、事例検討会を行いました。プログラムを実施する地域保健看護師の立場から「ごはんやパンの実物大カードを使用して栄養、運動、体格管理の関係を説明すると、参加者の反応が良く理解の促進につながった」等、カウンセリングで使用する教材の効果を実感する声や、「行動変容を継続して促すことの困難さ」等の率直な意見が出てきました。
本事業では、試行期間で得た知見を踏まえ、引き続きプログラムの改良を進めると同時に、プログラムを実施するために必要な人材育成の教材の開発を進めていきます。

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住民に対してプログラムを説明し、参加を促す地域保健看護師

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巻尺を使用し、腹囲や身長の計測を練習する参加住民

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対象者にカウンセリングを行う地域保健看護師

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事例検討会において、プログラム実施中に見られた好事例と課題について議論する地域保健看護師