他事業とのコラボも視野に-新任ボランティア現地オリエンテーションへの協力

2021年12月30日

ファブラボで作られるものは、特定の分野、特定の課題に限定されません。地域コミュニティのニーズに応じて、ほぼ何でも作ることができます。しかも、単品もののカスタマイズ製作に応じることができるので、利用者のアイデア、考え方ひとつで、ファブラボは、小口で、かつ多様なニーズに応じることができます。

「誰も取り残さない」ことが求められるSDGsの時代、ファブラボはSDGsのさまざまなゴールやターゲットの達成に、ものづくりを通じて取り組むことができます。また、SDGsでは最貧国、内陸国、小島嶼国の特別なニーズへの配慮が求められていますが、これらの国々の課題は、輸入への過度の依存にもあります。データだけのやり取りで多くのものを現地で生産できれば、貿易構造そのものを大きく変える可能性もあります。しかし、これらもすべて潜在的受益者の理解、利用者の考え方にかかっています。

このため、プロジェクトでは、長期専門家が着任した2021年5月以降、同じくブータンで実施されているJICAの開発協力事業の関係者に対しても、ファブラボやデジタルファブリケーションに関する理解促進に取り組んでいます。

新型コロナウイルス感染拡大を受けて派遣が一時凍結されていたJICA海外協力隊も、一時退避者の再派遣も含め、今年8月以降、ブータンへの派遣が再開されています。12月にも、新たに3人が着任し、現在、JICA事務所による現地オリエンテーションが始まっています。新たに着任した3人の協力隊員は、防災、体育教育、金属加工といった異なる分野、配属先で今後活動を開始します。

これに先立ち、私たちのプロジェクトでは、JICA事務所の現地オリエンテーションの一環として、12月28日、ティンプー市内にある現在同国唯一のファブラボ「ファブラボ・マンダラ」(注)を会場としてお借りして、「国際協力事業におけるファブラボネットワークの活用」というテーマで、半日間の研修を行いました。研修には、協力隊員に加え、JICA事務所に新しく着任した企画調査員2名も参加しました。

研修では、プロジェクト長期専門家が講師となり、世界のファブラボネットワークの拡大状況と設置デジタル工作機械の機能紹介、さらにそこから生まれた現地発のイノベーションの数々が紹介されました。特に、隊員の職種に合わせ、農業・農村開発や大規模災害被災地での緊急援助対応、体育授業で使用される器具の試作事例などが紹介され、さらに2022年7月下旬にブータンで開催される「第17回世界ファブラボ会議」に向け、世界中から集まるものづくり愛好家が、ブータンの社会課題の解決に取り組む機会を一緒に考えていこうと提案されました。

続いて後半は、デジタルファブリケーション技術の理解のため、ウェブベースの3Dデザインプログラム「Tinkercad」を使った3Dデータ作成実習と、3Dプリンターの操作学習が行われました。これらは、日本のファブラボで頻繁に行われている3Dデザイン入門講習会を参考に企画実施されました。参加者が作成したデータは、後日プロジェクトの3Dプリンターを用いて印刷され、参加者に届けられる予定です。

これらの取組みはまだまだ種まきの段階。プロジェクトが仲介者となって、国際協力関係者と地元ファブラボのコラボレーション事例がたくさん生まれることが期待されます。

(注)2017年に発足したこのファブラボは、これまで「ファブラボ・ブータン」と名乗ってきましたが、2021年11月、「ファブラボ・マンダラ」と名称を変更しました。

関連リンク

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受講者とプロジェクト専門家の集合写真(写真:山田浩司)

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Tinkercadを使って3Dモデリングの演習と格闘中(写真:山田浩司)

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入力する寸法を確認する受講者の皆さん(写真:山田浩司)