CST学生、冬休みを利用して、首都でマイコンボードの操作を学ぶ-micro:bit講習会

2022年1月10日

ブータンの大学の冬休みは長く、12月中旬から1月末まで、約1.5カ月あります。私たちのカウンターパートである王立ブータン大学科学技術カレッジ(CST)でも、期末試験を終えた学生たちは、それぞれの故郷へと帰っていきます。

中には、首都ティンプーで冬休みを過ごす学生も多いに違いない…。長らく首都勤務を強いられてきたプロジェクトの長期専門家は、CSTの学生向けに2つの課外学習プログラムを用意しました。そのうちの1つが、英国国営放送(BBC)が開発し、英国だけでなく、世界中の小中学生のSTEM学習教材として広く認知されているマイコンボード「micro:bit(マイクロビット)」の操作講習会です。

micro:bitには、LEDやボタンスイッチ、スピーカー、マイク、加速度センサー、光センサー、地磁気センサー、温度センサー、無線機能などが搭載されており、パソコンやスマホでプログラムを作り、デバイスに命令を送ることで、この小さなコンピュータを、自由に操ることができます。小型ですので、工作した玩具などに搭載して、その動作を制御するのに使うことができます。しかも、プログラムは、Pythonのようなプログラミング言語だけでなく、ブロックを組み合わせることで書くことも可能です。

しかし、ブータンではmicro:bitはほとんど知られておらず、中等教育で導入されたプログラミング教育も、ものづくりとつなげることで、学んだ知識の応用の幅が広がることが、あまり理解されていません。そこで、私たちは、1月の毎土曜日を利用し、3時間の基礎講習会を企画し、CSTの学生に、学科を問わず受講を呼びかけました。

すると、実に52人もの応募がありました。実際に実習で使用できるマイコンボードは、長期専門家が赴任時に携行した2個だけです。そこで、プロジェクトでは、各土曜日のセッションを午前の部と午後の部に分け、さらに各回とも2班に分かれて、受講者4~5人で1台のデバイスを使用できる形をとりました。さらに、マイコンボードだけでなく、ワニ口クリップや電池モジュール、サーボモーターなども用意し、実際に学生が書いたコードに基づいてモーターが動く姿や、2つのデバイスを無線でつないで、データが転送される姿を、実際に体験してもらうよう工夫しました。

1月8日(土)に開かれた講習会には、午前の部9人、午後の部10人が参加しました。LEDやボタン操作、各種センサーの利用に関するブロック・プログラミングからはじめ、そこからの応用演習、さらに同じコードをPythonで書いた場合との比較なども学びました。基本プログラミングとして教えられるのはここまでで、今後は学生各自の興味に基づき、さまざまなプログラムに発展させていってくれることを期待したいです。今回使用したデバイスも、長期専門家のCST着任がかなった後は、常に学生が利用できるようにする予定です。また、2月に大学が新学期に入って以降は、micro:bitに限らず、さまざまなIoTデバイスの操作法や利用法に関する勉強会も、プロジェクトで主催していきたいと考えています。

プロジェクトの活動の1つは、新設されるファブラボの近隣にある初等・中等学校へのデジタルものづくりの普及啓発です。この活動を推進するには、CSTの学生ボランティアの関与が不可欠です。CSTの学生がmicro:bitを理解することで、将来実施される、周辺学校向けのアウトリーチ活動の強力なサポーターになってくれることが期待されます。

なお、このmicro:bit講習会は、JICAブータン事務所の会議室をお借りして、今後も2週にわたって土曜開催されます。講習会では、長期専門家とともに、ファブラボ・ブータン(現ファブラボ・マンダラ)の元スタッフで、CST電気通信学科の卒業生でもあるナンダ・クマールさんにも、リソースパーソンとしてご協力いただいています。

【画像】

ラップトップの隣りにある小さなデバイスがmicro:bit(写真:山田浩司)

【画像】

講習会では異なる学科の学生同士の協働作業を重視(写真:山田浩司)

【画像】

micro:bitの構造について説明するナンダ・クマールさん(写真:山田浩司)