JICA海外協力隊とファブラボの初コラボ-縫製ワークショップと手工芸品開発

2022年12月24日

12月19日から24日まで、JICA海外協力隊の手工芸隊員である山中睦子さん(2021年度7次隊)が、ファブラボCSTにおいて、科学技術単科大学(CST)教職員及びその家族を対象とした縫製ワークショップを主宰しました。

このワークショップ開催は、工科大学に併設されたファブラボで、縫製関連機械(ミシン、ロックミシン、刺繍ミシン)の利用頻度を上げることを目ざしています。具体的な小物づくりを通じて、縫製関連機械の操作を、学内に住む教職員とその家族に体験してもらうこと、あわせて、学内にいながらこれまでファブラボを訪れたことがなかった関係者に、縫製関連以外のデジタル工作機器についても知ってもらうことを期待し、企画したものです。このため、型紙に代えて2D描画データをあらかじめ準備し、ハサミを使わずにレーザー加工機で生地をカットするという工程も組み込みました。

冬休み中であるにも関わらず、事前の要望調査では55人もの関係者から関心表明がありました。私たちは、ミシンの台数を考慮し、これを1回3時間、最大5人の受講者を受け入れて刺繡入りトートバッグを作るというプログラムとし、これを6日間で12回開催しました。欠席者も出たため、最終受講者は45人となりました。

縫製ワークショップの運営では、山中隊員に加え、プンツォリン近郊の高原学園都市ゲドゥにある、「カルマ・スティッチ・ハウス」にも協力いただきました。事前にファブラボCSTの学生インターン7人をミシン操作の研修でゲドゥに派遣し、山中隊員の縫製ワークショップ開催時には、同ハウス代表のカルマ・ザンモさんをティーチングアシスタントとして招聘しました。9月に日本に訪れた帰国研修員の1人も、刺繍デザインの準備とミシン操作をサポートしました。

学内関係者を対象として実施しましたが、近隣のコミュニティの関係者の中にも、「自分も受けたい」とのご要望をいただくことが多く、1月以降同種のワークショップ開催では、現地の人材を活用して、運営していきたいと考えています。

山中隊員は、首都ティンプーにある障害児・者職業訓練学校「ダクツォ」に配属され、ふだんは、障害を持つ青少年の収入創出とスキル向上のため、手工芸品の開発と製作の指導をされています。今回のファブラボCST訪問は配属先が冬休みに入ったことから実現しました。ファブラボCSTでは、山中隊員が開発している手工芸品のパーツのうち、現地で調達が不可能なぬいぐるみの目の製作について、かねてから相談を受けていました。この要望に、私たちは、光造形式3Dプリンターでお応えしました。

今回のプンツォリン滞在中、ファブラボの設備と課題対応能力を実際に体験した山中隊員からは、「ゾウの目」「フック」「商品陳列棚」「トラの鼻」といったアイデアが次々と寄せられ、ファブラボのスタッフや学生インターンと一緒に、デザインを作り上げていくことができました。

ブータンで活動する協力隊員は、2022年12月現在、20職種25人にも上ります。その活動において必要となるパーツや器具などの現地での製作を、さらにお手伝いしていけたらと私たちは考えています。JICA海外協力隊が活動展開中の国のほとんどにはファブラボがすでにあります。今後このような協力隊とファブラボの協働機会が、ブータンのみならず他の多くの国で見られるようになっていくことを期待したいです。

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学生インターンに準備する生地のサイズを指導する山中隊員(写真/山田浩司)

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男性職員もミシン操作を習う(写真/山田浩司)

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アイロンで取っ手に折り目を付ける作業を教えるカルマ・ザンモさん(写真/山田浩司)

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親子で受講したグループも(写真/山田浩司)

【画像】できあがったバッグを手にポーズ(写真/山田浩司)

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カルマ・スティッチ・ハウスでミシン操作を習う学生インターン(写真/山田浩司)

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山中隊員デザインの人形見本。目はファブラボCST製(写真/山田浩司)

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手工芸品陳列箱も山中隊員の注文で製作(写真/山田浩司)