森林情報分野の第一回基礎研修が開催されました(ボツワナ)

2017年6月30日

6月26〜30日 於:ボツワナ共和国、ハボロネ

プロジェクトの三本柱のひとつ、森林情報分野に関する能力強化研修が2017年6月にボツワナにて開催されました。これまで日本での合同調整委員会JCC(Joint Coordination Committee)を兼ねた関係機関での講義等や、タイでのアジアの参加型森林管理研修を行ってきましたが、今回の研修は南部アフリカ開発共同体(SADC)域内で現地の人材も活用し実施する、初の研修となりました。

プロジェクトでは15か国を対象に、等しく能力強化の機会を提供し、SADC加盟国全体の底上げを図っています。現状では、SADC地域共通の森林情報システムを構築する第一歩として、各国レベルでの国家森林情報システムの整備とそのための技術向上が課題となっています。そのため今回の研修では、加盟各国の技術者が自国の森林資源を持続的にモニタリングできるようにカリキュラムが組まれました。

森林情報の中で重要な情報の一つに、どこにどの位の森林が分布しているのか、それを地図上に表現した位置情報(地理情報)があります。地理情報には、携帯電話やカーナビでおなじみのGPS(Global Positioning System)から得られる位置情報や、空から地上の森林分布状況を把握するため人工衛星から受信する衛星画像情報などが含まれます。これらの地理情報をコンピュータで閲覧・加工するためには、一般的にGIS(Geographic Information System、地理情報システムと訳される)とよばれるソフトウェアが必要になります。ただし、これらのソフトウェアやデータを扱うには、大変専門的な知識と技術、経験が必要になります。今では、先進国だけでなくアフリカをはじめとした一部の国々でも、自国の森林情報を管理するために、高価な商用のGISソフトウェアと有料の衛星画像データが使われています。もちろん、高価なものはそれだけの価値はありますが、一方で年間のソフトウェア保守管理費用、衛星画像データの使用ライセンス料が高額になる傾向があるため、SADC加盟国だけでなく、多くの国々にとっては、経済的にみると自立的に進められるものではなく、国家の森林情報が出来上がっていないのが現状です。そこで、プロジェクトでは今回の研修を、「お金をかけなくても森林資源の持続的なモニタリングが可能であることを学ぶ」をメインテーマにしました。そのために専門家が知恵を絞り、各国が少ない予算でも継続できるものを紹介し、実習形式で体験していただきました。無償で利用可能なGISソフトウェアと、同じく無償の日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の世界の森林・非森林地図を用いて、2010年と2015年の間の森林面積変化の解析を実習し、専門家とローカルコンサルタントが技術の習得を支援しました。

すでにGISソフトウェアを利用している参加者からは、「無償のものでも高価な商用ソフトの機能と同等かそれ以上の機能もあることがわかりとても有意義であった」とのコメントが寄せられました。「自国でもこうしたソフトウェアの導入を検討したい」とのコメントも寄せられ、研修の意義を皆さん感じられていたようです。

また、この他に工夫した点として、各国からの参加者は、技術レベルや経験値が異なるため、未経験者と経験者がペアになり教え・学びあうようにしました。参加者は各国に戻ってから、自国の同僚などの関係者への先生役として研修の成果を伝える役割を担っていますので、その練習にもなったようです。技術レベルの高い経験者向けには、森林総合研究所REDD+COOKBOOK(注1)を活用して、カリキュラムを追加し、より高度な技術移転を行いました。

プロジェクトでは7月から森林火災管理分野、10月に参加型森林管理分野の能力強化研修を行い、SADC加盟国関係者の能力強化に日本の知見をフルに活用し、工夫をしながら進んでいきます。

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SADC JICAによるオープニング

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ペアで相互学習

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裏技を伝授する七海・米専門家