日本人短期専門家による労働安全衛生(KYT)研修

2017年4月7日

2017年4月3日〜7日

2017年度初の技術指導研修を実施しました。日本で企業の労働災害防止活動の支援を行っている中央労働災害防止協会から派遣された鈴木博仁(ゼロ災推進センター所長)短期専門家が4月初旬にカンボジアに滞在し、プロジェクトパイロット校の指導員や労働職業訓練省の担当者向けに、労働安全衛生の危険予知訓練研修(KYT)を2ヵ所(NPICとNTTIでそれぞれ1回づつ)で2日間ずつ実施しました。なお、各研修実施後は、同省で今回の研修の総括と今後の活動の方向性につき、研修参加者と議論を行いました。

職業訓練校は、製造業や建設業等、学生が卒業後に危険な業務に従事する可能性が高いことに加え、訓練校の実習場等施設内において危険物があり一歩間違うと大事故につながりかねないことから、指導員や職員さらには学生自身も、労働安全衛生の重要性を学ぶ必要性は高いと言えます。また、本プロジェクトの対象分野の電気については、感電やこれによる墜落死等、事故に遭遇した場合の重篤性も否定できません。こうしたことから、本プロジェクトの直接の対象者である電気学科の指導員に加え、指導員の養成課程の教員、他学科の指導員や労働職業訓練省の関係職員の参加を求めました。

労働現場には様々な災害がつきものです。こうした災害をなくしていくための実践的かつ基礎的な方法が今回の危険予知訓練(KYT)です。具体的には、日々の業務始業前や業務中に、予測される危険を確認(予知)し、対応策を職場全員で考えていくことにより災害ゼロの職場にしていく(ゼロ災)という訓練です。今回、職業訓練分野で安全衛生を取り入れるに際に、まずかかる基礎的かつ普遍的な安全衛生の取組みを学んでもらうこととしました。

研修では、日本の安全衛生の状況やこれまでの取組み、ゼロ災運動の理念、危険予知訓練(KYT)の意義・手法について実例に基づいて講義がなされ、また、日本の生産現場で実際に活用されている指差し呼称やタッチアンドコール、健康KYを実践してもらい、これを元に危険予知手法の一連の基礎手法であるKYT基礎4ラウンド法をグループワーク形式で学習してもらいました。指差し呼称の際の日本語の標語をカンボジア語に翻訳して、実際に研修生に実践してもらう様や、研修生が危険予知シートを元にした危険源やその対応策について模造紙に書き取る様子はほほえましいものがありました。

鈴木専門家は滞在中の過密なスケジュールにも関わらず、いつも笑顔でカンボジアの研修生に懇切丁寧に指導され、今回、カンボジア関係者に、労働安全衛生の重要性や認知度を高めることができました。

最終日には、研修参加者代表と労働職業訓練省関係者の参加を得て、研修の振り返りを通して、研修生との意見交換やカンボジアの労働安全衛生の現状について問題提起することもでき、また、研修生からはカリキュラムに取り入れていきたいとの発言もあったなど、実りの多い研修となりました。会議終了後、同省より、感謝状とともに、これまでの鈴木専門家の技術移転に感謝の意が示されました。

今後は、本研修をきっかけにして、職業訓練分野で、KYTをはじめ労働安全衛生の取組みが根づくようプロジェクトとして取り組んでいく予定です。

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危険予知訓練のためのグループワーク

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指差呼称の訓練(1)

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指差呼称の訓練(2)

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指差呼称の訓練(3)

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労働職業訓練省より感謝状贈呈

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指差し呼称のリストバンドを労働職業訓練省訓練総局長へプレゼント