2018年3月19日
2018年2月26日から3月8日まで、当プロジェクトの上級管理者カウンターパートを対象に、日本の人材開発分野の関係機関・民間企業の訪問やそこでの討議を行う本邦研修(コース名:職業能力開発行政)が実施されました。
本研修は、当プロジェクトのプロジェクト・マネージャーである労働職業訓練省技術職業教育訓練総局長やプロジェクト対象3校(NPIC、NTTI及びPPI)の各校長が参加する等、カンボジア側のキーパーソンが参加する非常に重要なものとなりました。また、JICA本部・カンボジア事務所のサポートも受け、訪問先も中央省庁、職業訓練施設を統括する組織の本部とその現場施設、関係行政機関や民間企業等、大変多岐にわたりました(当プロジェクトのチーフアドバイザー奥村も同行)。
・移動日を除き、2月28日から研修コースが開始されました。まず、JICA東京センター(TIC)において、カンボジア側参加者から自国の状況について発表を行ってもらい、引き続き、研修業務受託者である(一財)海外職業訓練協会(OVTA)から、日本の職業訓練の枠組及び社会労働情勢に係る講義がなされ、これらを踏まえた上で、日本・カンボジア双方関係者で討議を行いました。
・翌日から、順次、関係機関を訪問しました。まず、厚生労働省を訪問し、今後の活動や協力支援の方向性について同省幹部と討議を行いました。その後、国(同省)の職業訓練施設を運営する(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)本部を訪問し業務説明を受けた後、配電盤制御盤の製造とその設置・電気工事業を営む橋本電業社(株)に赴き、同社から中小企業としての経営方針や人材戦略の説明を受けました。
・次いで、JEEDの職業能力開発総合大学校(PTU)を訪問し、指導員(教員)育成・能力向上、カリキュラム開発、調査研究等、同校の概要説明を受け、校内現場を見学しました。終了後、東京都立多摩職業能力開発センター府中校を訪問し、就職支援、生活密着型の地方自治体が運営する職業訓練コースを見学しました。
・週末に、広島に移動し、週明けにJEEDの広島職業能力開発促進センター(ポリテクセンター広島)を訪問し、同センターの概要説明を受け、離職者訓練及び在職者訓練コースを見学しました。併せて、広島公共職業安定所(ハローワーク広島)を訪問し、職業紹介窓口における一般職業紹介及び職業訓練受講指示等の基本業務の説明を受け、また、来所者が自由に求人を閲覧することのできる求人検索装置等の所内の様子を見学しました。さらに、岡山(倉敷)に移動し、JEEDの中国職業能力開発大学校(中国ポリテクカレッジ)を訪問し、同校の概要説明を受け、高卒者を対象とする電気技術・機械技術等の訓練現場を見学しました。
・最後の訪問先として、兵庫(西宮)にある、きんでん(株)の教育訓練施設であるきんでん学園を訪問し、同学園における従業員教育や技能競技大会等の従業員のスキル向上に向けた取組について説明を受けるとともに、電気工事等競技大会に向けた練習風景を見学しました(昨年11月にNPICでの電気工事競技デモ・訓練を担当いただいた木下主任からも説明を受けました)。
・研修コース最終日には、TICにて、JICA本部担当及び厚生労働省幹部参加の下、報告会・評価会が行われ、カンボジア参加者から帰国後の取組について紹介がなされました。
今回の研修を通じて、日本の人材開発は、現場の指導員や訓練施設の創意工夫によって運営されていること、また、中央省庁、訓練実施機関、ハローワーク及び都道府県等の関係機関がこれを多方面から支えていること、さらに、民間企業との連携を積極的に進めているといった一連の日本のチームワーク(オールジャパン)力を実感してもらえたと思います。今後、カンボジアにおいて、こうした日本の取組を参考にして、プロジェクト活動を一層推進してもらいたいと思います。
なお、今回の研修では人材開発関係機関のみならず、広島の厳島神社や原爆ドーム・平和復興記念資料館にも足を運びました。ポル・ポト政権以降の内戦を経て荒廃した国土から復興を果たしつつあるカンボジア参加者には、特に印象に残った様が窺えました。加えて、当プロジェクトの松本専門家の前任である立壁ポリテクカレッジ福山主任職業訓練指導員との岡山(倉敷)での親交の場面やNPICから日本に留学中の指導員(厚生労働省事業、東海大学・JDS事業)が週末にカンボジア一行を東京案内する場面など、日本とカンボジア関係者との絆の深さが感じられる一コマもありました。かかる継続的な関係やサポーターづくりなどネットワークの構築も大切にしていきたいと思います。