技能評価システム移転促進事業のカンボジアでの取組に参画

2019年1月21日

2018年10月~2019年1月

経済成長の続くカンボジアでは、人材育成が戦略目標と位置付けられ、大きな政策課題となっています(注)。当プロジェクトでは、労働職業訓練省(MLVT)傘下の職業訓練校3校を対象校として、電気分野・短大レベルの訓練内容の改善を通じた技術者の育成に取り組んでいますが、政府では、職業訓練校等の教育機関で知識、技能や態度を培った人材が社会で活躍できるようにすることを目指して、仕事に関する技術基準や職業能力の評価システムの構築を進めています。

日本の厚生労働省では、日本の官民で培ってきた技能検定や訓練方法に関するノウハウをアジアの開発途上国に広く周知・啓発し、人材育成に資することを目的とするSESPP(Skills Evaluation System Promotion Program、技能評価システム移転促進事業)を実施しています。カンボジアでは2014年度から実施されており、2018年度は2018年10月から2019年1月にかけて、電気分野の多くの研修が、職業訓練校を会場として実施されました。当プロジェクトでは、カンボジア側のキャパシティビルディングの観点に留意しながら、技術的な支援をおこないました。

本年度は、昨年度実施された配電盤制御盤組立て、電気工事に加えて、電気系保全、シーケンス制御及び旋盤についての評価法及び模擬検定等が実施されました。

このうち電気工事の研修は、昨年は日本の若年者ものづくりの課題及び日本の部材を用いて実施されましたが、今年はカンボジアの国内競技大会の課題をアレンジした課題で取り組み、カンボジアで調達可能な部材が使用されました。また、昨年に引き続き技能五輪世界大会優勝者による課題作製のデモンストレーションとともに技術指導を受けることができ、参加者の能力向上の大きな動機付けとなり、非常に有益な研修となりました。

当プロジェクトでは、日本から見える専門家の方々がスムーズに技術移転を展開できるよう、材料・工具等の準備等の技術的支援を、担当校の指導員とともに取り組みました。次年度以降は指導員のみで準備できるような指導も同時に実施し、指導員のキャパシティビルディングを図ることができました。また、技能トライアルに日系企業からの受検者を得て、活動の成果を当地の産業界へ拡げることもできました。

1月21日には、本年度のカンボジアに関する活動を振り返り、次年度の取組について議論する政策対話会合(官民合同委員会)が労働職業訓練省(MLVT)において開催されました。MLVTからは、本年度の活動への感謝とともに、2019年度の事業の拡充が求められました。カンボジア日本人商工会の出席者からは、電気保全・メンテナンス、製品の維持管理等のスキルが必要とされていることや、将来を見据えた人材育成の重要性が指摘されました。当プロジェクトからは、当地において技能評価の取組が定着していくよう、今後も継続してサポートをしていきたい旨を発言しました。

当プロジェクトでは、TVET(職業技術教育・訓練)によって培われた知識、技能や態度が適切に評価され、ものづくりの現場を支える熟練技能者が活躍できるよう、今後、SESPP事業と一層連携をしていきたいと思います。

(注)2018年、カンボジア政府が政策課題への対応の方向性を示す「四辺形戦略」(四辺形は「成長」「就業」「平等」及び「効率」を指します)のフェーズ4が公表されました。今後5年間の4つの優先分野は、「人的資源開発」のほか、「経済の多様化」「民間セクター開発・市場開拓」及び「持続的で包摂的な開発」となっています。

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技術指導風景(配電盤・制御盤組立て)

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実技試験の様子(配電盤・制御盤組立て)

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デモンストレーションの様子(電気工事)

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合成樹脂管の曲げ加工の指導風景(電気工事)

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受検者へのオリエンテーションの様子(シーエンス制御)

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動作確認の様子(シーケンス制御)

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検定委員へのオリエンテーションの様子(電気系保全)

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実技試験の様子(電気系保全)