日本・WAPES共同プロジェクトのスタディー・ビジットに参加

2020年2月5日

2020年2月3日～5日

当プロジェクトでは、産業界に有能な人材の輩出を目指して、労働職業訓練省傘下の職業訓練校3校の電気・ディプロマコースを対象として、実践的な訓練活動に取り組んでいます。職業訓練校の卒業生が培った知識や技術が産業界で発揮されるよう、各校では就職支援が実施されていますが、その仕組みの一環として、公的な職業紹介機関を担う国家雇用機構（NEA：National Employment Agency）の第一線機関であるジョブセンター（日本のハローワークに相当）が、職業訓練校内に設置されています（注1）。

NEAは幅広い就職支援活動を行っており、そのうち全国就職フェアには、当プロジェクトも4年連続で参加しています（2019年11月3日付け「第7回National Career and Productivity Fairに参加」を参照）。また、NEAは公共雇用サービスの実施機関により構成される国際的な組織であるWAPES（World Association of Public Employment Services、世界公共雇用サービス協会）に2013年に加盟しており、2020年2月現在、アジア・太平洋地区は日本（厚生労働省職業安定局）、中国、韓国を含む12か国が加盟しています（注2）。

カンボジアにおけるWAPESの活動で注目されるのが、日本・WAPES共同プロジェクト（2019年～2021年）です。昨年9月に日本の担当者がプノンペンを訪れ（2019年9月11日付け「厚生労働省のWAPESミッションの訪問」を参照）、テーマが「NEAのサービスの質の向上」（業績評価制度の導入、ジョブセンターの利用者（事業主、求職者、訓練機関）向けの満足度調査の実施）と決まりました。そしてこのたび、プノンペンのNEA本部にて3日間のスタディー・ビジットが開催され、当プロジェクトからその一部に参加しました。

今回のスタディー・ビジットは、WAPES加盟の専門家が自国の取組を紹介し、業績評価制度や調査の導入についてNEAに助言することを目的として開催され、NEA本部、国内の各ジョブセンターの所長や日本、韓国及び英国の専門家を含む約40名が参加しました。

初日には、NEAからの活動状況等の紹介、WAPES事務局からの共同プロジェクトの説明の後、CJCC（日本カンボジア人材開発センター）の専門家から、同センターのビジネス・起業支援等の幅広い活動の紹介とともに、KAIZENに関する特別講演が行われました。参加者がNEA本部・ジョブセンターの仕事の改善を検討するに当たって良いキックオフとなりました。また、WAPES事務局からの加盟国を対象とした取組の紹介に続き、2日目にかけて、日本、韓国及び英国の専門家から、業績管理及び顧客満足度調査の参考事例が報告されました。カンボジアの事情（国内の産業構造、都市と地方の関係、NEAの人材や財源面のリソースなど）に即した、実現可能な仕組みの構築を目指すことが重要との指摘がなされました。その後、KJ法等のカードを使ってアイデアをまとめていくグループ・エクササイズにより、具体的な改善の仕組みの検討が行われました。

このほか、NEAのプノンペンジョブセンター、モバイル・ジョブセンターや、当地の民間の人材・職業紹介会社の視察も行われました。

スタディー・ビジットの期間中、日本からの出張者を含む参加者と当プロジェクトとの間で意見交換を行い、職業訓練と就職支援の円滑な連携の重要性を再確認しました。当プロジェクトでは、日本・WAPESの共同プロジェクトがカンボジアに実り多い成果をもたらすよう、連携・協力を続けながら、当地における人材育成の関連活動を盛り上げていきたいと思います。

（注1）NEAのジョブセンターは、2020年2月現在、本部のある建物にプノンペンセンターがあるほか、全国12の州（カンボジアにはプノンペン特別市のほかに24州があります）に設置されています。NEAでは将来的により多くの州に配置していくことを目指しながら、フェイスブック等の情報通信技術を活用したサービスの効率化とともに、「モバイル・ジョブセンター」（最新のインターネット環境に対応したICT設備、プロジェクター、豊富な求職者用資料を備えたライブラリーなどを搭載した車載型ジョブセンター）の活動にも取り組んでいます。

（注2）2019年12月には、カンボジア北部のシェムリアップにおいて、「公共雇用サービスにおけるデジタル化」をテーマとするアジア・太平洋地区のカンファレンスが開催されました。