パイロット職業訓練校の指導員へ新しい訓練機材の講習を実施

2020年2月21日

2020年1月15日~16日、1月21日~22日、2月13日~14日、2月21日

カンボジアの職業訓練校での教育訓練はこれまで、学科の比重が高くなっていました。産業界のニーズを踏まえ、当プロジェクトでは、実技に重点を置いています。パイロット職業訓練校における最終実技試験の実施もその一環です(2019年10月5日付けプロジェクトニュースを参照)。

当プロジェクトでは、実践的な訓練機材を開発し、訓練校において指導員が日々の教育訓練に使いこなすことができるレベルまで習熟し、実際に活用され、「生きた教材」として定着することを目指しています。指導員は20代、30代の若手も育ってきていますが、産業界のニーズに対応して、さらなる能力向上が必要とされています。

このたび、新しい訓練機材が調達されたタイミングで、パイロット訓練校のNPICにおいて、松本専門家(電気)により、パイロット訓練校(NPIC/NTTI/PPI)の指導員へ、技術移転の講習(2コースは各2日間、1コースは3日間)が実施されました。

1月15日及び16日は、制御盤(電気をコントロールして、エレベーターやオートメーションなど、機械を自動制御するもの)の組立の講習(科目は「電気設備施工」に対応)に8名が参加しました。1日目は一つひとつの手順を時間をかけてじっくり学び、2日目は通しで組み立てることができるようなスケジュールとしました。世界基準より厳しいとされる日本の民間規格による組立て・配線法、また、組立て後の電気的特性にかかる検査法も講義し、品質重視の訓練を展開できるような指導を行いました。このような指導方法はカンボジアではまだ導入されていないものであるため、訓練を受けた指導員も熱心に休憩時間を顧みず、手を動かした訓練に楽しんで取り組んでいました。きめ細かな指導を少人数で行うことにより、技術移転を確実なものとすることができたと考えています。

1月21日及び22日は、オシロスコープ(眼に見えない電気信号を波形という形であらわして、温度、湿度、圧力、音声等を測る測定器)及びファンクションジェネレーター(オシロスコープで測定するための波形を形成する装置)の使用法の講習(科目は「電気・電子回路」に対応)に13名が参加しました。基本的な操作法および交流回路での実習法を講義しました。現在、交流回路科目ではすべて学科のみによる授業を展開していましたが、かかる実習を展開することにより、授業の質向上および生徒の理解力向上につながることを期待しています。

2月13日、14日及び21日は、FAセンサーについての講習(科目は「センサ技術」に対応)で9名が参加しました。自動化工場では製品を製造・運搬するために様々なセンサが使用されています。今回開発した訓練機材では、実習を通して各種センサの原理・特性および適切なセンシング方法を習得することができます。また、様々な検出サンプル(材質の違い、厚さの違い、形状の違い、色の違い等)があり、その検出用途によりセンサの種類やアンプの設定が異なることも併せて学習できます。ほとんどの指導員は初めて触るFAセンサに大変興味をもち、本講習に積極的に取り組んでいました。

それぞれの事前講習の最後には、参加した指導員に対して確認試験を実施し、指導員の習得度を確認するとともに、キャパシティビルディングにつながったことを確認しました。

今回の講習では、実施校のNPICの指導員がクメール語で作業工程のマニュアルを作るなど、技術の普及のためのカウンターパートの主導的な役割が光りました。受講した指導員にはどの講習も高評価で、「実際に手を動かし、段階を踏んで学ぶ貴重な機会になった」、「新鮮な気持ちで講習を受講することができ、刺激を受けた」といったコメントがありました。

訓練校の現場でのきめ細かな訓練活動は、当プロジェクトの強みとなっています。今後、プロジェクト終了後を見据え、各校での導入及び定着が進み、指導員一人ひとりが魅力的な授業を行い、訓練の成果が一層上がるよう、これからも指導能力の強化の支援を継続していきたいと思います。

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制御盤組立時の説明

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配線作業

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絶縁抵抗計による測定

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オシロとファンクションジェネレータの操作実習

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交流回路の実験

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近接センサーによるアルミ体検出実習

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カラーセンサによる色識別実習

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Narun氏(NPIC校)による光電センサの原理の説明