新型コロナウィルス感染症の影響を受けての当プロジェクトの活動について

2020年5月20日

新型コロナウィルス感染症(Covid-19)は、カンボジアの社会や経済にも深刻な影響を及ぼしています(注)。TVET(職業訓練)の分野も例外ではなく、2020年3月後半から約2か月間、全土の職業訓練校が完全に休校となり、当プロジェクトのカウンターパート(労働職業訓練省及びパイロット職業訓練校3校)との活動は中断を余儀なくされました。5月11日の週以降、パイロット職業訓練校3校(NPIC、PPI及びNTTI)で順次、セメスター(eラーニングによる授業)が一部始まることとなりましたが、秋の最終実技試験は縮小して実施されることが見込まれています。

また、本年6月中旬に予定されていた全国TVETデー(National TVET Day)は予定どおりの開催が出来ない見通しのほか、7月下旬にシンガポールで開催予定となっていた第13回ASEAN技能競技大会(ASEAN Skills Competition)は、2021年4月への延期が発表されました。

当プロジェクトでは、テレワークによって、テキストの作成、今後の協力についての検討などを継続しています。スムーズに訓練校での活動を再開できるよう、SNS(交流サイト)も活用してカウンターパート、産業界等の関係者とのコミュニケーション、連絡調整を続けています。今回の経験は、プロジェクトにとっても貴重な学びの機会となっています。

今後は、プロジェクト活動の中断前に開催された本年3月11日のPIG会合(同日付けのプロジェクトニュースを参照)での議論に基づきつつ、計画の必要な見直しをおこなったうえで、訓練校での活動を再開していくことになります。このたびの遅れを取り戻し、カンボジアにおけるTVETの持続的な発展に向けて、新たな気持ちで取り組んでいきたいと思います。

(注)カンボジアにおける新型コロナウィルス感染症、雇用・労働面の影響と対策等の状況

カンボジアでは2020年1月27日に最初の国内感染者(中国人観光客)が確認された後、2月には南部のシアヌークビル港にクルーズ船の一時寄港を受け入れました。3月7日に2人目の国内感染者が公表されてから4月上旬にかけて、海外からの帰国者、外国人観光客等の感染者数が急増し、4月29日に非常事態宣言(state of emergency)に関する法律(公共秩序の維持を目的に、移動や集会、就労の制限などを可能にする内容)が成立・公布されました。

今年のクメール正月の祝日(4月13日~16日)が延期されるなど、人の移動を制限する異例の措置も講じられ、4月13日以降、5月20日まで国内の新規感染者は公表されていません。第2波に備えて引き続き注意が必要とされているものの、非常事態宣言は発令されておらず、国内の累積感染者122名(再感染を含めると延べ123名)のすべてが回復し、死者はゼロと公表されています。

カンボジアは近年、年7%前後の経済成長を続けてきましたが、2020年の成長率は、2.5%(本年3月30日、世界銀行)、2.3%(4月3日、ADB)との予測が出るなど、既に大きな低下が見込まれています。

労働職業訓練省によると、基幹産業である繊維産業の原材料の輸入(6割以上が中国から)が一時的に滞ったことにより、国内の関連工場の一時閉鎖が発生しました。また、本年3月のADBのレポート「The Economic Impact of the COVID-19- Outbreak on Developing Asia」によると、カンボジアはGDPに占める観光産業のシェアが1割強とASEAN加盟国中最も高く、外国人観光客(3割以上が中国人)が激減したことの影響を大きく受けました。

こうした事態を受けて、労働職業訓練行政では、一時待機を余儀なくされた工場労働者への所得補償を充実したほか、就職説明会による離職者の再就職支援、タイ等への出稼ぎ労働者の帰国管理などが講じられてきています。