カンボジア初のディプロマコース標準訓練パッケージが完成

2020年9月22日

カンボジアでは依然として新型コロナウィルス感染症(Covid-19)の第二波への警戒が続いていますが、状況は落ち着いています(注1)。一部の職業訓練校では、eラーニングに加えて少人数の実技ワークショップも始まり、9月21日からは全土の訓練校が再開可能となりました(注2)。また、当プロジェクトは2021年3月27日まで半年間延長となり、現地での活動の遅れを取り戻し、2015年9月から始まった活動をとりまとめていくこととなりました。

このたび、カンボジア政府の全国訓練委員会(National Training Board、労働職業訓練大臣が主宰)が約3年ぶりに開催され(注3)、当プロジェクトが作成に関与した電気・ディプロマコース(2年制の短大課程相当)の「電気工事・メンテナンス(Electrical Installation and Maintenance)」に関する国レベルの標準訓練パッケージ文書が承認されました。

プロジェクトの活動では、政府の承認を得るための最終案を作成するとの目標になっていましたが、カウンターパートである労働職業訓練省側の精力的な作業の結果、さらに進んで関係省庁等を含めた政府の承認までこぎつけることができたものと考えています。

現在も様々な開発ドナーが、カンボジア国内で職業訓練の標準訓練パッケージの作成支援を行っていますが、高校卒業までのワーカーレベルのものがほとんどであり、短大卒のレベルのものが国家標準として承認されるのは、カンボジアで今回が初めてとなります。

当プロジェクトは、産業界のニーズを踏まえ、首都プノンペンのパイロット訓練校3校において、製造業の基礎技術として最もニーズのある電気分野のディプロマコースを対象としています。訓練内容の質の向上を目指し、適切な訓練機材を導入・活用し、技術の習得をより重視した訓練の実施を推進・支援してきました。

この現場での実践を踏まえた標準訓練パッケージ文書のとりまとめに向けて、2019年7月からは政府の検討プロセスにも精通しているカンボジア人のコンサルタントを雇用し、産業界や職業訓練校の指導員を交えた会合により、2020年3月にかけてドラフトが作成され、Project Implementation Group(PIG)会合に報告された後、労働職業訓練省内で作業が進められてきました。

今回承認された文書は、労働職業訓練省の運営するホームページに公開され、全国の訓練校が積極的に活用することが期待されます。

当プロジェクトでは、この標準訓練パッケージを通じて、労働職業訓練省が全国で取り組む普及活動を後押ししつつ、パイロット訓練校における実践面を重視した訓練の定着に引き続き取り組み、ものづくりの現場(工場)の生産ラインの中核を担うテクニシャンの育成に取り組んでいきたいと思います。

(注1)カンボジアにおけるCovid-19の新規感染者は、2020年7月から8月上旬にかけて増加しましたが、その後はクメール正月の振替休日(8月17日~21日)の期間を含めて急増しておらず、9月22日時点の国内感染確認数は275例(死者ゼロ)と公表されています。

(注2)職業訓練校では、教室に入る生徒の人数の制約、検温やマスク着用など衛生面の措置が徹底されています。なお、例年8月に実施される全国統一高校卒業試験(G12-exam)は、今年は12月に実施されます。これに伴い、訓練校への新入生の入学は遅れを余儀なくされますが、内部進級は通常のスケジュールどおりに、11月に新しい年度が始まることが各校で目指されています。

(注3)全国訓練委員会は、2020年3月に規定の見直しがおこなわれ、職業訓練に関する議論をより包括的にできるようになりました。今回は、標準訓練パッケージのほか、学生の技能を評価するセンターや評価者の基準、コンピテンシー(職業能力)に基づく評価のガイドラインが承認されました。技能評価に関する各種整備が進められています。

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標準訓練パッケージの承認が得られた場面

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標準訓練パッケージ文書等の説明を受けるイット・ソムヘーン大臣(中央)、サォポーン長官(左から2人目)

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NTB出席者の集合写真