チリ大学で実施中の「地震学ディプロマコース」で、東大の井出哲教授が講義しました。

2017年7月14日

昨年度からチリ大学と実施している第2回目「地震学ディプロマコース」で、東京大学大学院理学系研究科の井出哲教授が講義し、日本列島での高精度地震観測網の整備により観測可能となった「ゆっくり地震」の特性等について話しました。また本コースでの講義の他、チリ国内の研究者や学生等を対象にした一般公開セミナー「通常地震とゆっくり地震の物理学」を開催し、約200人の聴衆を前に、ゆっくり地震の概要や、地震と潮の干満との関係等、地震学における最新の研究状況を紹介しました。

ゆっくり地震とは、非常にゆっくりとした速度で断層のずれが進行し、地震波を放射せずにひずみエネルギーを解放する特異な現象のことです。2011年の東日本大震災でも約1ヵ月前からゆっくり地震が観測され、その後、本震と津波が発生したことが分かっていることから、ゆっくり地震の観測が巨大地震の予測につながる可能性が示唆されています。既にこの現象は、日本だけではなく、アラスカやカナダ米国境界、メキシコ、チリ等、世界中で確認されており、今後、国際的な研究が期待されているテーマの一つで、今秋には地震学の学術交流を目的として、チリ大学の研究者が東京大学を訪問する予定です。

KIZUNAプロジェクトで実施しているチリ大学地震学ディプロマコースには、チリをはじめ、メキシコやドミニカ共和国等、13ヵ国24人の研修員が参加しており、6月に自国で1ヵ月のオンライン受講をした後、7月初旬から1ヵ月、チリに滞在し、地震学について集中的に学んでいます。講義のほか、チリ国内に整備されている地震観測点を訪問したり、そこから送られてくる地震観測データを集積し、地震活動を常時モニタリングしている同大学内の国立地震観測センター等も視察して、運用面に関する知識も深めています。
(文・写真 武田和代)

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チリ大で開かれた公開セミナーで講演する井出教授。

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国立地震観測センターで、チリ側研究者と意見交換を行う井出教授。