日中友好環境保全センター「第2回日中環境ハイレベル円卓会議」-環境にやさしい社会構築プロジェクト 日中平和友好条約締結40周年記念事業-

2018年6月9日

日中友好環境保全センターは、日本の無償資金協力と中国政府の資金により、1996年に北京市内に開所しました。同センターとJICAは、1992年以来、長期に亘って技術協力プロジェクトを行っており、現在はフェーズ5にあたる「環境にやさしい社会構築プロジェクト」を実施しています。2018年6月9日、日中平和友好条約締結40周年記念事業として、日中友好環境保全センターにおいて、中国生態環境部、日本環境省の支援を得て、JICAと同センターの共催により、「第2回日中環境ハイレベル円卓ダイアログ」を開催しました。日本及び中国の政府高官、政策立案者、研究者、企業、メディアなど約300人が参加し、盛大な会議となりました。

中国では本年3月に環境保護部が生態環境部へ改組され、対象となる業務や空間を拡張し、気候変動問題や農村地域や海洋の環境問題も担当することになりました。また、日本では本年4月に第5次環境基本計画が閣議決定され、今後の環境政策の展開の方向性が示されました。会義では、はじめに中国生態環境部・黄潤秋副部長から新時代の中国生態環境保護について、日本環境省・笹川博義政務官から新時代の日本の環境対策について特別基調講演をいただき、両国の環境部門を取り巻く状況や経験について相互の理解を深めました。続いて第1セッションとして「大気汚染と気候変動への協同対応」をテーマに日中双方の有識者らによる講演、討議が行われました。中国ではPM2.5をはじめとする大気汚染対策への取組を強力に進めています。他方、国際的には2015年に国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で「パリ協定」を採択、2016年に国連が「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(SDGs)を決定し、気候変動への対処が求められています。短期的な視点で大気汚染対策及び気候変動対策には資源やエネルギーの効率的利用など共通する取組が多く、さらに長期的には環境、経済、社会の各方面を統合的に向上させる、持続可能な社会に向けたパラダイムシフトが必要とされます。

本セッションでは何建坤・清華大学低炭素経済研究院院長及び竹本和彦・海外環境協力センター(OECC)理事長よりそれぞれ両国の気候変動政策について、柴発合・中国環境科学研究院大気分野首席科学者及び坂本和彦・アジア大気汚染研究センター所長よりそれぞれ両国の大気汚染対策についての紹介があり、さらに徐華清・国家気候戦略センター主任より温室効果ガスと大気汚染物質の協同抑制の経験、前田秀・JICA理事よりJICAにおける気候変動対策及び大気汚染対策について発表を行いました。その後、日中双方の有識者らによる議論や会場からの質疑など活発な意見交換が行われました。これまで中国において大気汚染対策を担当する部門と気候変動を担当する部門は異なっていたため、このような包括的な議論を行う機会は多くありませんでしたが、今回の議論が第1歩となり大気汚染、気候変動対策分野の政策研究が更なる発展をしていくことが期待されます。午後の第2セッションでは「郷村振興戦略下の農村環境管理」というテーマを取り上げました。中国における農村環境管理は喫緊の課題であり、生活排水や生活ごみの処理から農業、畜産などに伴う環境問題、大気汚染の一因でもある稲藁、麦藁の野焼き対策など幅広い分野で対策に迫られています。本セッションではプロジェクトで実施してきた日本人専門家との交流や本邦研修の成果を踏まえ、董旭輝・日中友好環境保全センター総工程師より農村環境管理システムに関する日中比較の成果が発表されました。長い歴史を経て発展してきた日本の農村に対して、中国の農村は急速な発展による社会経済発展水準の格差や広い国土面積や異なる気候条件などの物理条件、さらに都市から移転してきた工場などの汚染源対策といった問題も抱えていることが指摘され、規制、技術、財政、ガバナンスなどの面での対策を深化させる必要性が提言されました。その後、日中双方の有識者らによる発表や董総工程師が指摘した論点について有識者やフロアを交えて議論が行われました。この他にもセンターでは、日中の専門家が一堂に会し、同日にグリーン消費や金融などをテーマとしたセミナー、翌日には大気汚染監測などをテーマとした会義も開催され、ダイアログでの議論を含め日中環境協力の可能性を考える良い機会となりました。

2016年4月より開始している「環境にやさしい社会構築プロジェクト」は、中国における環境問題への対応能力を総合的に強化するため、政策・法制度の整備促進、環境汚染防止技術の普及、市民らの環境意識の向上などを進めていくものです。大気・水・固体廃棄物等の課題に取り組むと同時に、農村環境管理やグリーンサプライチェーン等に関する研究も進めています。今後の活動状況は、JICAホームページ、中国事務所微博、ニューズレター等でも引き続きご紹介していきます。

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前田秀・JICA理事(右)と中国生態環境部・黄潤秋副部長

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第2セッションのディスカッション