孔内傾斜計による地すべり調査実施について

2017年12月1日

設計能力向上に係る活動の一環として、2016年11月に実施された講習会では、斜面・法面防災対策についてC/Pである道路橋梁治水局の技術者らと、斜面・法面防災対策の現状や在来工法の効果の限界などについて協議しました。

この際、専門家チームは、在来工法では効果に限界があり、鉄筋挿入工と法枠工などを組み合わせた抑止工を導入すべきであると提案しました。さらに、これらの抑止工の設計では、前提として、地形判読と地質調査に基づく現状把握が必要であることも提言しています。

なお、調査対象地は、道路拡幅工事に伴い、切土斜面の表層土が崩壊し、その背後に、地すべりが存在する可能性が認められた地域です。(Ainaro県Aituto地区)

2017年6月、調査対象地区にて実施された地表地質調査と小型のUAV(Unmanned Aerial Vehicle:無人機)を用いた地形測量の結果、Aituto地区の地すべりは、東西に並んだ2つのブロックから構成されており、東側のブロックがより不安定であることがわかりました。特に、東側のブロックは、大雨などによって滑動し、道路や近隣住民に被害をもたらす可能性もあります。

この後、C/Pとの協議を重ね、測量・調査を実施し、より良い設計を検討することの重要性が認識されたため、CDRSプロジェクトでは、2017年11月より地すべり専門家の派遣を行い、孔内傾斜計などによる地すべりの詳細な検討を開始しました。

2017年11月から12月にかけて、調査対象地区の東側と西側のブロックにて計5か所においてボーリングを掘削し、そのうち3か所に孔内傾斜計のためのケーシングと呼ばれるアルミ製パイプを埋め込みました。現場で地すべり土塊が滑動すると、地中に埋め込まれたケーシングが曲がります。その曲がった角度を孔内傾斜計により計測して、移動距離を計算する仕組みです。その他2か所の穴には、地下水位の推移を観測するために側面に小さい穴をあけたPVCパイプを設置しました。

専門家チームは、地すべりの地質構造の解析を行うとともに、道路架橋治水局の技術職員と協力して孔内傾斜計と水位計による定期観測を実施し、その結果に基づいてAituto地区の地すべりの安定性の評価を進めていきます。

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林専門家が孔内傾斜計プローブ部の説明をしている様子

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孔内傾斜計により計測開始時の地盤データを収集している様子

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OJT研修員が水位測量を実施している様子

【画像】OJT参加メンバーとの集合写真