長期研修員の帰国後の活躍

2021年12月22日

引き続き新型コロナウイルスの影響が続き、UNTLの閉校や渡航を伴うプロジェクト活動の停止が続いた2021年でしたが、本邦で修士号また博士号を取得して帰国したUNTL教官が、大臣や公社局長に立て続けに就任し、現地の社会経済開発に貢献しています。本プロジェクトでは、「社会ニーズに対応した教育・研究が実施されることを通して、UNTL工学部が社会課題の解決に貢献する」ことを上位目標として掲げていますが、まさにUNTL教官が政府・公社要職の立場から力強く国家開発を牽引しており、2001年の緊急無償援助から20年にわたる協力が着実に成果として社会に還元されています。いずれも、UNTL工学部と関連のあるポジションにいることから、UNTLを巻き込んだ調査・研究への発展も期待されます。

以下、要職に就く帰国研修員を5名紹介します。

石油・鉱物資源省大臣に就任

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Dr. Víctor da Conceição Soares(ビクター ダ コンセイサオ ソアレス)
長期研修生(2002年来日)
長岡技術科学大学大学院 機械工学科
2004年 修士号取得
UNTL代替エネルギー研究グループ所属

昇進までの経歴

ビクター教官は東ティモール国立大学工学部の前身であるディリ・ポリテックニック(1992年設立)から機械学科の講師として採用。2000年にポリテクニックが大学工学部へ昇格すると同時に工学部教官となり、長岡技術科学大学修士課程留学後には工学部第2代目(2006年~2010年)の学部長に就任した。また、学部長在任中、2006年から2007年の1年間は高等技術教育省副大臣も兼務した。ポルトガルにて博士号し、工学部機械学科シニア教官として引き続き教鞭をとっていたが、2020年6月24日、第8次立憲政府の内閣改造により、石油・鉱物資源大臣に就任した。

日本での留学生活

長岡技術科学大学大学院では、機械学科の加工・生産工学研究室に所属し、修士号を取得した。長岡での留学時には学業以外にも、東ティモールでは経験できないスキーなどにも挑戦し、研究室の日本人学生や他国からの留学生と積極的に親交を深めた。

帰国後の日本との繋がり

現在も技術協力プロジェクトの支援大学である岐阜大学の支援を経て、風力エネルギーに関する研究を続けている。大臣就任前までは、工学部の代替エネルギー研究グループのグループ長を務め、日本人教員と一緒にヘラキャンパスに気象観測装置を設置するなどの活動を行った。

東ティモール電力公社総裁に就任

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Dr. Paulo da Silva(パウロ ダ シルバ)
長期研修生(2017年来日)
長岡技術科学大学大学院 機械工学科
2020年 博士号取得
UNTL代替エネルギー研究グループ所属

昇進までの経歴

2002年の独立後は国際NGOなどでの短期の技術職を経験し、2005年より東ティモール大学工学部機械学科の講師として教鞭をとる。専門はエネルギー分野である。長岡技術科学大学大学院にて博士号取得後、2021年1月に東ティモール電力公社総裁に就任した。

日本での留学生活

長岡技術科学大学では「東ティモールのための環境とリスクマネージメントを考慮したものづくりの研究」をテーマに博士号を取得、勉学だけでなく、日本人の時間を守る文化など多くのことを学んだとのこと。

帰国後の日本との繋がり

博士課程在学中は、エネルギー分野の研究・論文投稿を積極的に行っており、帰国後も指導教官との共著論文を発表している。東ティモール電力公社総裁として、電気作業の安全面向上のため、東ティモール工学部や技術協力プロジェクトとの連携協議も行っている。

国家電力規制庁⾧官に就任

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Dr. Ruben Jerónimo Freitas(ルーベン ジェレニモ フレイタス)
岐阜大学大学院 電気電子・情報工学科
2017年 論文博士号取得
UNTL代替エネルギー研究グループ所属

昇進までの経歴

2005年より東ティモール国立大学工学部電気・電子学科教官として教鞭をとる。副学部長を経験してのち、2017年9月に第5代目の工学部長となる(2017年~2021年)。技術協力プロジェクトの短期研修や専門家指導を活用して研究活動および論文投稿を重ね、2017年岐阜大学工学部より論文博士号を取得。2021年1月に国家電力規制庁⾧官に就任した。

日本での留学生活

技術協力プロジェクトの短期研修を活用して岐阜大学にて研究活動を実施する傍ら、日本国内の観光地を小旅行するなどして積極的に日本社会の理解に務めた。「光伝導性半導体における欠陥関連分散型現象の動力学」という研究テーマで論文博士号を取得した。

日本との繋がり

博士の学位を取得後も、半導体専門書の章分担を博士指導教員と共同執筆するなど、局長という要職に就きながらも、日本人教員との共同研究活動を続けている。

国家開発庁長官に就任

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Mr. Mariano Renato M. da Cruz(マリアノ レナート)
長期研修生(2002年来日)
広島大学大学院国際協力研究科交通工学研究室
2004年 修士号取得
UNTL路面モニタリング研究グループ

昇進までの経歴

2000年より東ティモール国立大学工学部土木学科教官として教鞭をとる。公共事業省の大臣アドバイザーなども歴任し、2015年に第4代工学部長に就任する。2017年には公共事業省副大臣に任命される(2017年-2018年)。2021年2月より国家開発庁長官に就任する。

日本での留学生活

広島大学では都市交通に関する研究を行い、修士論文のテーマは「SUSTAINABILITY EVALUATION OF URBAN DEVELOPMENT IN THE CONTEXT OF TRANSPORTATION PLANNING」。

帰国後の日本との繋がり

技術協力プロジェクトの短期研修や専門家派遣指導を活用し、路面モニタリングシステムの共同研究グループ長も兼任して日本人教員の指導をうけながら道路分野の研究を続けている。

政府公共インフラ整備ワーキンググループコーディネーターに就任(首相官邸直結)

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Dr. Benjamim Hopffer Martins(ベンジャミン ホッパー マーティンス)
長期研修生(2017年来日)
山口大学大学院 創成科学研究科
2020年 博士号取得
UNTLジオサイエンス・防災研究グループ

昇進までの経歴

2000年、東ティモール国立大学工学部土木学科教官として教鞭をとる。2012年土木学科所属のまま、地質・石油工学科の初代学科長として新規の学科立ち上げに尽力。2021年4月4日に起ったサイクロンによる洪水対策のため、インフラ関連省庁を統括する政府ワーキンググループのコーディネターにルアク首相により任命される。

日本での留学生活

地滑りの分野を専門として博士課程で研究、博士号論文題目は「リモートセンシングによる東ティモール・ボボナロにおける複雑な地すべり斜面の地表面変状の観測および評価」。日本留学中は、山口県のカトリック教会や以前から親交のある東ティモール独立支援者と交流を持った。

帰国後の日本との繋がり

山口大学および山口大学で一緒に勉強したインドネシア留学生の出身大学(バリ島・ウダヤナ大学)とジオサイエンス・防災研究グループを発足させ研究活動を計画中である。