複式学級での教科書の活用

2019年4月11日

中米では複式学級が多く存在します。中米では比較的教育環境の整っているエルサルバドルでも50%以上の学校において複式学級が設置されており、最も極端な例では1教員が幼稚園から6年生を担当するといったケースも存在しています。今回はそんな複式学級での教科書の使用状況についてお伝えします。

山を越え、谷を越え、川を渡り、大きな石の坂道を上り、ようやくたどり着いたのはホンジュラスとの国境線が目の前に迫るサンミゲル県サン・アントニオ・デ・モスコ市サンディエゴ地区にあるエル・シカウアテ学校。幼稚園から中学校3年生までを2名の教員が午前と午後の2部制で指導しています。当然複式学級となり、午前中は幼稚園と1年生で1クラス、2年生と3年生で1クラスを編成して学級担任制で対応。午後は4、5、6年生で1クラス、中学1、2、3年生で1クラスを編成して教科担任制で対応しています。

小学校2、3年生の算数授業をみて驚かされたのが児童たちの学習規律。教員はどうしても2年生への指示の時間が長くなりますが、その間自律的に課題に取り組む3年生の姿が目を引きました。そして、午後に視察した中学生7、8、9年生の複式授業。これまでに見てきたすべての授業の中で1、2を争うほどの素晴らしい授業でした。特に感銘を受けたのが自主的・自律的に学習する生徒の姿勢。授業を開始すると、なんと教員の指示を必要とせず、自分たちで個別の自力解決を開始し、解法を教科書で確認し、整理して、練習問題に取り組んでいました。疑問が出るとまず教科書の中で類似の例題を探す、見つからなければ友達に聞く、それでもわからなければ教員に聞く。このように学習の仕方が完全に身についていることに驚かされました。

複式の教員を取り巻く環境は厳しく、日本でいう僻地手当はあるものの、山奥にある学校のため教員は月曜日から金曜日まで集落に家を借り生活しており、その家賃すら賄えない雀の涙同然の金額。この日視察した教員は午前中は2、3年生の学級担任で全教科を指導、午後は教科担任となり理科・数学・体育等を指導しており、当然のことながら授業準備の負担も大きくなっています。このような環境下でこれほど素晴らしい教育を提供する教員の勤務姿勢と職業意識の高さには感銘を受けました。

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2年生に個別指導する様子。後方にいる3年生はそれぞれ問題を解いている。

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2年生を指導する教員の横で練習問題を解く3年生の児童。複式であっても黒板が1つしかないケースも多い。

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中学生では、わからないことがあったら、教科書で解法を確認する、ペアで相談する、教員に訊ねるといった約束事ができており、勉強の仕方が身についていました。

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ラリベルター県タマニケ市アクアスパン学校でも、教員が1つの学年を指導する間、他の学年では子ども同士相談し合う場面がみられた。