エルサルバドル教員のポテンシャル その1

2019年5月9日

5月3日から8日にかけて実施された教員の学び合いでは様々な教員のポテンシャルの高さを見せつけられました。今回はそんな例をいくつか紹介します。

5月7日に振り返りを実施したモラサン県の研修ファシリテータ-は教員からの質問に的確に答える姿が印象的でした。例えば「3年生を指導しているが、掛け算の九九をしっかり習熟していないので、掛け算の筆算の学習でも九九で躓いている。どうすればよいか。」といった質問がありました。エルサルバドルではこういった場面では、授業中に九九の復習ばかりを行い、結局授業が進まないといったことがあります。ここでファシリテーターは「まず授業の目標を考えて、筆算の手順を理解することが目的であるのだから、ここでは例えば、黒板の横に九九表の横に張るなどして見せるべきである。また、九九の習熟は時間がかかるものであり、45分の復習でどうにかできるものではない。隙間時間等に継続して行わなければならない。」と明確に答えていました。

サンタアナ県のメタパン市では教員から「なかなか理解ができない生徒もいる中、なぜ授業を進めなければならないのか。復習を多くして、より多くの生徒を理解させなければだめではないか。」との質問が上がりました。そこでファシリテーターは簡潔に「もう少し長いスパンで考えると、生徒たちは高校の卒業標準テストを受ける必要がある。この時、ある内容は習っていないからできないといった事態を生じさせることは教員として許されない。よって、すべての内容を年間で扱わねばならず、復習はほかの授業以外の時間を工夫して作らなければならない」といった回答がなされました。

ラウニオン県では低学力の児童の欠席率や宿題の未実施率の高さが話題となりました。保護者への働きかけが必要となる中、多くの学校では保護者会などで教材の意図の説明や啓発を行ったという経験が共有されるものの、問題のある保護者は通常保護者会も欠席するといった更なる問題が指摘されました。教員から保護者への働きかけでは、できることに限界があるという雰囲気が漂う中、1教員が立ち上がりこう発言しました。「限界がある、仕方がない、と言っていては改善がない。働きかけをやめれば進歩はない。できることは精いっぱいやりましょう。例えば授業参観をして教材の良さを知ってもらうこともできるし、私は読もうが読まなかろうが関係なく全員をSNSに登録し、啓発などのメッセージをずっと発信し続けているわ。」

ここでは書ききれませんが、このように努力してくれている教員が数多くいます。これが、エルサルバドルがもつポテンシャルなのでしょう。必ずしも教員の勤務環境が恵まれているとは言えない中、ここまで頑張ってくれる教員がいることに心が洗われる気分となりました。

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多くの教員の質問を的確に対応するモラサン県ファシリテーター。

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昨年インパクト評価に参加した教員は、様々なグッドプラクティスを共有してくれました。ラウニオン県